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Channel: ブルワー –日本ビアジャーナリスト協会
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【ブルワーインタビュー】ベアードらしい、一期一会の物語。新たな可能性を秘めた “木のビール”に出逢う

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ビアラバーの皆様、はじめまして。
静岡在住の4期生、山口紗佳(さやか)です。よろしくお願いいたします。
静岡県西部より、ビールと共にあるライフスタイルを通じて家族や子連れ(一児の母です)でも楽しめるビアスポット&イベント、こんなところになぜこのビールが!? ――意外な場所で飲める意外なビールなど、ローカル色強めの情報をお届けしたいと思います。 ※家族持ちの方は飲みに行く口実にご活用ください。

早速ですが、最近出合って深く心に刻まれたビールのお話でも。




海外のビール含め、今やたいていのビールが(主に東京で)飲めるこのご時世に、静岡県浜松市のビアハウスでしか飲めない、あるいは飲めなかった(6月10日時点では在庫あり)特別なビールがあります。

『Tirna5周年記念エール』

JR浜松駅北口から徒歩7分の場所にある、ベアードビール専門店『Tir na n- Og(ティルナノーグ)』の開店5周年を記念して特別に創られたビールです。
目を引くのは銘柄名の下のコメント。

「山椒&黒もじの木、おいしいです。」

“黒もじの木”……?

「樹液」を使ったビールは飲んだことがあっても、木を使ったビールは全くの未体験。そもそも木を使うとは?? 木を燻したスモーク香をつけたラオホスタイルとも異なるようで、好奇心をくすぐられます。

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運ばれてきたのは濁りのしっかりした赤銅色のビール。
鼻を近づけると柑橘系のような、でもそれよりもスーッとした清涼感を伴う香り。どこかで嗅いだことがあるような気がするものの、間違いなくビールでは体感したことのない独特の芳香です。奥の方で山椒由来なのか、オリエンタルスパイスの風味も微かに帯びていますが、味の想像には及びません。
ドキドキしながら口にすると。

……!

予想を裏切る味わいに、その美味しさに、思わず目を見張りました。
勝手な先入観で、濃厚でクセの強い味かと思いきや、清新な香りはそのままに、ほどほどの苦みもあり、総じて飲みやすい。5%と全体的にライトで後味もすっきりしているので、ゴクゴクと喉の渇きを潤すのにもいいし、時間が経っても上品な芳香が損なわれず、ゆっくりと味わえます。印象的でありながら、押しつけがましくない香りのバランス……この香りの正体こそ黒もじ(クロモジ)
聞けば、木の枝をそのまま漬け込んで創られたとのこと。

つまり、「木」そのものを使ったビール

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“クロモジ”」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より

茶道を嗜む人なら見慣れた素材かもしれませんが、黒文字(クロモジ)とは全国各地に自生するクスノキ科の落葉低木。和菓子に添える高級爪楊枝として使われるのが一般的ですが、葉や枝に独特の芳香があり、昔は化粧品や石鹸の香りづけにも使われていたそうです。

黒文字三膳

お箸の吉膳 黒文字一膳箸」より

一瞬でこの上品な香りのビールに心奪われて、醸造元であるベアードブルーイング代表、ベアードさゆりさんにインタビューさせていただきました。

※以下「」内がさゆりさんのコメント。
******************************

――黒文字の木を使おうと思われたきっかけは何でしょうか?

「これも大工さんのお庭でとれたものを持ってきてくれたんですよ。あるとき、戸田にあるお宅の庭に生えていた黒文字の小枝を持ってきてくださって、使ってみたら?って」。

「大工さん」とは、ベアードファンならご存知、季節限定『大工さんのみかんエール』でお馴染みの大工さん(長倉さん)。P1140338
木の温もり溢れる特徴的なタップハンドルなど、ベアードビールの直営タップルーム全店の内装を、設立当時から手掛けている方です(もちろん修善寺のブルワリーガーデンも)。その小枝がまとう爽やかな香りから、ブライアン氏がレシピをイメージしたそう。それまでさゆりさんも黒文字の存在を知らなかったとか。

「うちで使っているレモンや柚子、山椒も全部大工さんの畑にあったもの。いつも旬の時期になると、もぎたての果物や作物を持ってきてくださるんです。その年にとって種類や量はまちまちですが、新鮮で無農薬だからとっても安心なんですよ。黒文字を知ったのも大工さんがきっかけでした」。


――私も調べて初めて知ったのですが、精油のクロモジはとても高価で、小指の先ほど(!)の1ml瓶でも結構なお値段です。今回はどれぐらいの量を使ったのでしょうか?

「そんなに高価なんですか! 知りませんでした(笑) 。黒文字に限らず、大工さんの農作物はあくまで自家農園で栽培されたもので、本業(もちろん大工)ではないので少量です。オイルのように採油の手間をかけることもなく、ドライホッピングと同じ要領で、乾燥させた枝を熟成中のビールに漬け込んでいます」。

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ドライホッピングはベアードビールがこだわる伝統的な製法。最終段階の冷えた麦汁にホップを漬け込むことで、香りを一層際立たせる手法です。

――柑橘系のような、でもそれとも少し違うオリエンタルな風味と清々しさを感じます。スパイシーなところは山椒かと思いきや、クロモジ(精油)にも似た成分があるんですね。

「そうですね。種類によっても若干感じ方が違うと思いますが、山椒の香りに近い部分もあるので相性はいいですね。樽詰めの時にもいい香りが漂っていました。この香りを活かすために、個性が控えめでスタンダードなホップを使っています」。


――“木のビール”は初めて経験しましたが、他にはご存知ですか?

「樹液などのエキスや酵母を使うビールはありますが……。そうですね、木を香りづけに使うのは私も聞いたことがないですね」。

――飲んだお客様の反応は?

「よしこさん(『ティルナノーグ』オーナー)からは、『意外な飲みやすさで皆さんに好評』と聞いています。実は今度お店に行くイベントがあるんですが、それまでにビールが残っているかどうか……(笑)」。
※6月13日(土)15時~ ベアード夫妻来店イベント(末尾記載)

――今のところ『ティルナノーグ』でしか飲めないようですが、今後再び醸造や定番化の予定はあるのでしょうか?

「今のところ再販予定はありません。うちで醸造する年間60種類近いビールは全て一期一会。その季節で手に入る果物や農作物などの材料からインスピレーションを受けてできたものです。自然の恵みなので、その年で多少味も違います。黒文字のビールも一旦売り切れ終了なので、今後については分かりませんね」。

******************************
残念ながら次にいつ再会できるのか分かりませんが、ベアードブルーイングが送り出す数多くの限定ビールには(定番化したものもあるものの)、このように一度しか出合えないビールも多く存在します。 自家農園で栽培された野菜や果物をはじめ、新鮮で力のある食材を使ったビールはどれも実に忘れ難い美味しさ。
それはまさにご縁次第。一期一会の物語です。

ちなみにアロマテラピーの専門家に黒文字について聞いてみると、
「樹木自体は全国に自生しているものの、香料作物として育てられたものが少ないために精油としては高価。マイナーではあるものの、その香気成分にはリナロールやリモネン、ゲラニオールなどのリラックス成分や鎮痛・抗菌作用をもつ成分が豊富に含まれており、純国産の和精油として一定の人気を誇る」とか。

料亭で供されるお造りや肉料理に小枝を添えたり、リキュールや焼酎、お茶に枝を漬け込んで香りづけをしたりと、料理にも使われるという黒文字。ビールの世界にも「木」という存在が、個性や多様性、深みをもたらしてくれるかも――。
そんな可能性も感じさせる、1杯でした。

と、ここまで綴っておきながら、おそらくほとんどの方に味わっていただけないことが心苦しいのですが、最後にそんなベアードビールの限定醸造も登場する浜松の姉妹店をご紹介しておきます。




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Tir na n- Og(ティルナノーグ)

住所:静岡県浜松市中区田町329-8 マルマンビルB1F
電話番号:053-450-6006
営業時間:月、水~金18:00~L.O.23:30、土日祝15:00~L.O.23:30
定休日:火曜、第3月曜日

【イベント情報】
6月13日(土)15:00~16:00  「ブライアンに聞こう!」
ブライアン&さゆり夫妻が来店します。ベアードビールを片手に、ベアードの歴史やビールの話、今後の展望など、ブルワー夫妻と直接飲みながら話せるチャンスです (予約不要)

私の“きっかけ”ビール[1杯目] 木内酒造 木内洋一さん『アンカースチームビール』

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一杯のビールとの出逢いが、人生の転機に。ビール業界の第一線で活躍している人にインタビューし、「私の“きっかけ”ビール」について語っていただきます。

一回目は、常陸野ネストビールでお馴染みの木内酒造合資会社 専務取締役の木内洋一さん。1996年にビール事業を始める以前にアメリカで出逢ったのが、『アンカースチームビール』でした。

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サンフランシスコで初めてのアンカースチームは 「不味い!」


1980年後半、私がちょうど茨城に帰って日本酒ビジネスを始めた頃、毎年カリフォルニアに遊びに行っていたんですよ。そこでは美味しいもの食べたり、ゴルフしたり。当時30代でフラストレーションも溜まっていたのと、単純にカリフォルニア楽しいし好きだったから。ワイナリービジネスと、クラフトビールビジネスが気になり出したのもその頃。

当時、業界の新聞記事に日本の日本酒、アメリカのバーボン、ドイツのビールといった、世界の「国酒」と呼ばれるものがダメだ、という内容の記事を読んだのね。その中で2つだけ、面白いビジネスがあると書いてあって、それが全盛だったナパバレー、カリフォルニアのブティックワイナリー。もう一つが、アメリカのクラフトビール。

天気の良い6月のある日、一日中歩いて喉の渇きを潤そうと、サンフランシスコのピアノバーに行ったの。そこで初めてアンカースチームビールをオーダーしたんだけど、期待を込めて飲んだら、これが「不味い!」(笑)。苦くてしょうがないんですよ。その頃はコロナビールにライム入れて飲んでた時代で、ビールに清涼感を求める飲み方しか知らないから。

その時、「え、流行っているビールがこんな不味いの? でも待てよ、ワインだって、最初酸っぱかったろう?」って思ったの。その頃ワインの輸入業者にいたときだった。喉越しばかり追求していて、この美味しさがわからない自分が悪いんだと考えて、それからいろいろ勉強したの。ビールのスタイルとか歴史とか。

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「アンカースチームビール」はラガー酵母を使用し常温で発酵させることでエールのような香りを持つハイブリッドなビール。


久しぶりにアンカースチームをテイスティングしてみて


アンカースチームの話で有名なのが、フリッツ・メイタグっていう資産家が、サンフランシスコのアンカースチームが閉鎖すると聞いて、彼の個人マネーを投資して再生したというレジェンドがあって。カリフォルニア由来のスチームビールと銘打って、1970年代に大成功するんだけど。

実はフリッツ・メイタグは、イギリスのビター、ペールエールといったビールをコピーしたのだと思ってます。それで、今日はイギリスビールとしてテイスティングしてみたところ、ガスが低くて、モルティでホップの感じもきちっとしていて、素朴なペールエールだなと。最初は訳がわかんないビールと思って飲んで「不味い、苦い」だったけど、今改めて飲んでみると「美味しい」。

きっとフリッツ・メイタグは、当時ビールのスタイルも無い時に、いかに、サンフランシスコの地ビールとして宣伝しないといけなかったんだと思うけど、これはラガー酵母でイギリスのビールを模したものとして、素晴らしい出来。レシピも変わっているかもしれないし、自分も変わっているから当時と同じものだという前提だけど。

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サンフランシスコは自分にとって特別な街


サンフランシスコといえば、今年中にはサンフランシスコに直営のレストランをオープンする予定。サンフランシスコって小さな街なんだけど美味しいシーフードがあって、ケーブルカーが走っていて、「酒とバラの日々」「ダーティーハリー」といった映画の舞台にもなっていて、映画ファンの私にとって大好きな街。あれ、こうしてみると不思議だな、つながってるね!(笑)。

日本酒、ビール、ワインと知り尽くした木内さんにとってビールの魅力とは


日本酒、ビール、ワインの中で、ビールは、価格の差もないしとってもフレンドリーなお酒。アルコールの低さと苦み、ビジネスの広がりという意味でも魅力的だし、日本酒やワインに感じるような、ブランド志向やマニアックに偏りすぎないのも良いと思う。これからも初心者に対して親切にわかりやすく、ブランドではなくテイスティングで価値を知ることを教えていくことが、業界として大事かもしれないね。

常陸野ネストビール誕生秘話はこちら(木内酒造合資会社 HP)

★ 取材協力 「 Le petit L’ouest 北沢小西」

下北沢にある、クラフトビールの品揃え抜群の酒屋さん。店内で購入したお酒を試飲できる「角打ち」もできるので、店内には日本人だけでなく外国人の姿も多く見られます。「アンカースチーム」や「アンカーリバティエール」は、比較的若いアメリカ人も指名買いするスタンダードな銘柄のため、常時置くようにしているとのこと。

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★ 取材後記(みつき)

ビール事業以外にもワイナリー、チーズ、蒸留酒など、多角的なビジネスの才能を持つフリッツ・メイタグ。木内洋一さんとお話ししていて、幾度かその姿が重なってくる場面もありました。次の人を指名していく形で進めるこの企画、次回は誰の“きっかけ”ビールが登場するでしょう。どうぞお楽しみに。

私の“きっかけ”ビール[2杯目] 那須高原ビール 小山田 孝司さん『Orval(オルヴァル)』

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一杯のビールとの出逢いが、人生の転機に。ビール業界の第一線で活躍している人にインタビューし、「私の“きっかけ”ビール」について語っていただきます。

二回目は、那須高原ビールの代表取締役 小山田さんに、ビール事業を始める前に飲んだベルギーの修道院ビール『Orval(オルヴァル)』にまつわる話を伺いました。

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家具屋の三代目がビール事業をはじめたきっかけ


ビール事業を始める前は、代々続く家具屋を継いで事業をしていました。祖父や父のものづくりというDNAを受け継いでいるからか、小さい時から工作やデザインが得意でしたね。

ビール造りを始めるきっかけは、1994年の規制緩和のときに長距離トラックのドライバー向けに仮眠もできる食堂「ザ・トラック・イン」を経営していたので、まずここでビールを出そうと考えたんですね。年間60キロリットルであれば、いけそうだ、と。

『Orval(オルヴァル)』は理屈も次元も超えた味


画像:オルヴァル
ベルギーのオルヴァル修道院で作られるトラピストビール。ホップの苦味と酸味のバランスが絶妙。

『Orval』は、1996年に地ビール業を始める前に、神楽坂のブラッセルズで飲みまして、当時出会ったビールの中でダントツで印象に残ったんです。まさに“次元の違う味”。五感を超えて、とにかく好みだなと感じました。

以前、ビール評論家の故マイケルジャクソン氏にお会いした時に、「人生最後のビールに選ぶとしたら、どんなビールがいいですか?」と伺う機会があったんですが、そのときにOrval と答えられたんです。私が世界で一番美味しいと思っていたのも Orval でしたから、驚きと嬉しかったのとで、今でもとても印象に残っているんです。

ところで、このラベルのストーリーご存知ですか? 修道院を設立したマティルダという未亡人が、結婚指輪を誤って泉に落としてしまったところ、鱒が口で拾ってくれたという。そういったストーリー性や瓶の形といった、Orval のデザイン性も好きですね。

那須高原ビールのラベルデザインも自ら手がける


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那須高原ビールのラベルは、私自身が納得できるものにしたんです。実は、イラストレーターさんにお願いしていたのですが、たまたまこのデザインを自分で描いてみて建物の設計士さんに見せたら、とてもいいね! となって(笑)。最終的にこのデザインに決まりました。

太陽と月、道化師は「幸せ」という意味。那須連山の守り神である「大鷹」、騎士道の高貴な精神「王冠」をイメージして手書きで書いたんです。「大高山に見守られながら、美味しいビールを飲んで、幸せになろう」がコンセプトですね。こうしてイメージしながら、考えている時が本当に楽しいんですよね。

下見で行ったドイツで無濾過ビールとの出逢い


ドイツではブルワリーを40社くらい回りました。1ヶ月くらいのあいだで、毎日3リッター、4リッター飲んでましたね。でも不思議と二日酔いにならないな、と気づいたんです。自分の体で感じて調べていくうちに、濾過と無濾過ビールの違いは、ビール酵母なんじゃないかって。ビール酵母は活性酸素を除去する働きがあると言われているんです。

チェコのピルゼン地方の場合、無濾過の場合だと、最大頑張って、1年間で4、500KLがマキシム、と言われているそうです。それ以上になると、ろ過器を設置して、流通のことを考えないといけなくなると聞いたことがあります。本当の意味でのクラフトというのは、工業製品ではなくて、手作り感のことをいうのではないか、と思うんですよね。クラフトビールの良さは「時を楽しむ」。そこにつきますから。

画像:那須高原ビール工場
“整然の中に感性が宿る”という考えのもと、工場のタンクの配置を自ら設計した


事実なんだけど、真実ではない


みんなが感じたことは、すべて事実なんですよ。ただ、事実なんだけど、真実というのは、その事実の総合的なものなんですよね。だから事実なんだけど、真実ではない。そこが重要なのかなと。楽しむっていうのは、真実に近づいたそのもの本体を感じ取れるかどうか。たとえばホップが効いているというのは事実なんですけど、それだけじゃないんですよ。

うちで全く同じレシピで、それぞれのブルワーが作ったものは味が違います。それはどうしてか、っていうのは、性格が出るのだと私は思います。例えばブルワーが60℃でレストしてください、って言った場合、59.9℃で止める人と、60.1℃で止める人。その微妙な差の繰り返しが、個性となって現れます。料理でも、工作でも、同じ材料をもらって作っても、その差は出るでしょうね。

なので、作り手の個性がストレートにでるのが、クラフトビールの良さってことでしょうか。ひとタンク、ひとタンクが味のすべて。レストランだったら鋭いお客さんは、「シェフ、変わったでしょう。」と。そこで五感だけの人だったらもう来ないってなるし、六感の人は、それでもなにか好きだからと思うか。

『ナインテイルドフォックス』のラベルの意味


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『ナインテイルドフォックス』は、麦芽とホップと酵母、水だけを使用し、バーレイワインとは異なる造り方で長期的に熟成が可能な世界初の熟成ビールです。1998年からですから、今も18年前から各年代とってあります。このラベルに描いている「九尾の狐」は、異次元の世界で「英雄」という意味なんです。月と太陽という幸せのテーマは必ず入れています。メソポタミアの格言で、「ビールがあってはじめて、家庭の幸せが保たれる」というのがあるのですが、ビールの世界のことを私なりに想像を膨らませて、私が描きました。

ビールの味わい方も、「五感プラス、第六感で飲む」ものだと思っています。五感だけで飲むと偏るけど、そこに感性を加えながら、理屈を超えて美味しいとか、楽しい、と思って飲む。一番縛られないでビールを味わえる方法だと思います。

今後は“世界で初めて”に挑戦したいですね! ナインテイルドフォックスは“ビンテージ”という概念がなかったときに作ったビールですし、98年に出した本物のいちごだけを使った「いちごのビール」も世界で初めて作ったんです。業界人じゃない発想を活かして(笑)、また皆さんを驚かせるような、新しいものを作りたいですね!

★ 取材後記(みつき)

「那須高原ビール」の“品の良さ”は、小山田社長のお人柄から醸し出されていると感じた取材でした。皇室とのご縁とか、数々の受賞歴からも、独自の哲学から生まれる美意識が幅広いファンを惹きつけているんですね。「那須 愛の思風塾」の世話役もされている小山田社長の夢は、ビールというジャンルを超えてもはや世界平和レベル! また那須に遊びに行きたくなりました。 次回もどうぞお楽しみに。

私の“きっかけ”ビール[1杯目] 木内酒造 木内洋一さん『アンカースチームビール』

ビア女の酒場放浪記(8)Mikkeller Tokyo

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飲むこと食べること楽しいこと大好きなビア女が
飲み歩いて気に入ったお店を勝手にレポートします。

Mikkeller Tokyo

デンマークのブルワリー、ミッケラー(Mikkeller)の直営店が8月22日渋谷にオープン!
早速、飲みに行ってきました。

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ミッケラーは2006年、デンマークの首都コペンハーゲンにミッケル・ボルグ氏クリスチャン・ケラー氏が立ち上げた、特定の醸造所を持たない「ファントム(幻影)ブルワリー」。

自国を始め、アメリカやスコットランドなどの個性的な小規模醸造所の施設を使用して、色々なスタイルのビールを造っており、ビールファンには人気の高い醸造所なのです。

なぜ、他社の醸造施設を使ってもおいしいビールが造れるのか。
それは天才的な醸造家による綿密なレシピに他なりません。

ミッケル氏はもともと科学の教師だったとか。
その類まれなる才能と探求心で世界中のビール醸造を研究し、わずか10年で600種類以上の革新的なビールを世の中に送りだしました。
世界のトップブリュワーのひとつとして知られています。

タップビールの数は20種類。
ミッケラーのオリジナルビールだけでなく、ミッケル氏の御眼鏡に適った日本国内のクラフトビールもラインナップ。
ボトルビールも合わせると80種類以上。

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レアもののビールを見つけるとついもう一杯飲んでしまうのもマニアの悲しい性。
フルーティーなビールから、がっつり濃厚なビールまで
味わいに幅があり、飲み飽きなさそう。


ジェネラルマネージャーは、ハミルトン・シールズ氏
東京に拠点をおき世界中を駆け巡るバーテンダーです。

バーの店舗デザインはノルウェーのデザインアイコンで活躍する福田和貴子氏が担当。
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「日本から見たデンマーク、デンマークから見た東京と、有機的なものを感じられるデザインに」
そのコンセプトの通り、店内は日本でも北欧でもなく、そのどちらでもある不思議な感覚。
天井の正方形のマス目や、球体のランプ、背もたれのついたチェアは、日本的でもあり北欧的でもあります。


オープニングに合わせて来日していたミッケル氏とハイチーズ。
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右から、ハミルトン氏、ミッケル氏、著者

ミッケル氏は、まだまだ最高のビールを探す旅の途中だという。
今後、ミッケル氏のビールとMikkeller Tokyoがどんな進化をしていくのか、
それも楽しみですね。


Mikkeller Tokyo
住所/東京都渋谷区宇田川町37-10
営業時間/ 月~木曜日15:00~24:00 金曜日15:00~26:00
土曜日12:00~26:00 日曜日12:00~24:00
収容人数/40名程度
アウトドアスペース/20名程度
タップ数/20種類
ボトル数/総数80種類。でもまだまだ拡大及び成長予定

Mikkeller Tokyo 公式ホームページ
http://www.mikkeller.jp/

Mikkeller Tokyo Facebookページ
https://www.facebook.com/mikkellertokyo

(2015年8月訪問)
☆内容は変更になっていることがあります。
ホームページ等でご確認の上、お出かけくださいね。

私の“きっかけ”ビール[3杯目] いわて蔵ビール 佐藤航さん『常陸野ネスト ホワイトエール』

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一杯のビールとの出逢いが、人生の転機に。ビール業界の第一線で活躍している人にインタビューし、「私の“きっかけ”ビール」について語っていただきます。
 
三回目は、「いわて蔵ビール」世嬉の一酒造 四代目の佐藤航さん。ビール醸造を志し悩んでいた時に出会ったのが、『常陸野ネストビール ホワイトエール』でした。
 
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とにかく視野を広げたかった学生時代

 
僕は日大の獣医学部で環境微生物学を学んでいました。ずっと理系だったのですが「生物系は50%位女性がいる」って書いてあって、工学部ではなく生物学を選択(笑)。そんな動機ながらも微生物の勉強をしてました。大学 4 年になったとき、もっと視野を広めたい思いもあって、休学届を出してオーストラリアのメルボルンに行ったんです。当時はクラフトビールのことも知らなかったので、ワイン飲んだり、バーベキューをしたりして満喫してましたね。ヒッチハイクして、インド洋まで行ったり。猿岩石より先に大陸横断してたりして(笑)。
 

微生物の世界からコンサルタント会社へ。経営を叩き込まれる日々

 
オーストラリアから帰ってきたら、日本ではバブルがはじけていて、就職先があまりない状態でした。船井総合研究所というコンサルタント会社になんとか入社し、経済学部、経営学部卒ではないので、徹夜で本を読んで、決算書読んで、3 日目で決算書分析を出して、はいダメってやり直しの日々だったんです。あの時はたくさん資料や本を読んで猛勉強しましたね。あとカバン持ちで北海道から沖縄まで、いろいろな企業の社長さんにお会いして経営者のアツい想いを聞いたりしたことも、今思うとすごい刺激になっていたと思います。
 

父のビール事業に最初は反対も、ヴァイツェンの美味しさに一転

 
1995 年にビール事業を父がはじめると言った時、東京にいた僕は反対したんです。当時ビールといえば大手しか知らなかったし、小さい会社が同じようなものを造ってもダメだろうと思ったし、100 年以上の歴史がある大手ビールに張り合って、どうして酒屋が始めるんだと。エチゴさんに続いて、造り酒屋もビール事業を始めた時期だったので、父としては勢いを感じていたんでしょうね。
 
そして打ち上げ花火のように第一次ビールブームが終わったとき、会社が大変だと、東京から呼び戻されたんです。戻るとビール事業が大赤字だからという話になってて、僕はコンサルタント会社にいたし、理屈で考えても「ビール事業を止めましょう」ってなるんですけど、その時飲んだヴァイツェンが美味しくて、なぜかビール事業を続けようと思ったんです。
 

ビール造りを 3 ヶ月で引き継ぎ「ホワイトエール」に出会う

 
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「ビールを造る」と決意したのはいいんですけど、前の醸造士が辞めるので僕が 3 ヶ月間でビール造りを引き継ぐことになって。だから不安でいっぱいだったんです。ちょうどその時、北上わっかビール(現在終了)と平庭高原ビール(現在終了)や、銀河高原ビール、ズモナビール、宮守ブロイハウス、うち(いわて蔵)の 6 社で「東北ブルワーズ協会」というのがあって、ビールの勉強会やろうよっていう話になって、日本のビール事業で成功している、木内酒造さんに行こうって話になったんです。
 
前日入りした夜に、せっかくだから木内酒造さんのビールを飲みに行こうと、木内さんに樽生で出しているお店を教えてもらって。そのお店でカクテルグラスで出されたのが、「常陸野ネストビール ホワイトエール」との出会いでした。この香りを嗅いで、すげーー!!って。これが世界で賞を獲っているビールかと、もう感動しちゃって。
 

木内酒造でのビール修行で学んだこと

 
次の日に醸造所を見学したとき、木内専務のお父様が説明してくださったんですけど、ビールの造り方を経営者もわからないとダメだって話をされて、すごい感動したんですよね。一関に戻ってからも、木内酒造で修行したい想いが募って、「この間視察した、いわて蔵ビールの佐藤航です。ビールのこと全くわからないので、醸造について勉強させてください!」と電話したんです。木内敏行さんは「いいよ!」って言ってくださって。「君が美味しいビールを作って、業界がよくなるんだったら、僕らも嬉しいから」と。うちの父を説得して、月~金まで通いましたね。夜行で帰って、週末自分のビールを仕込む生活。1999 年から 2000 年にかけてだったと思うんですけど。
 
木内酒造では、“ヨーロッパは何世紀も前からビールを作っている。日本の大手ビールメーカーは100 年。僕らはまだ 10 年ちょっと。だからチャレンジしないといけない”と言う話や、ビール醸造は科学的な知識と創造的な芸術的な感覚を持たないと行けないと言う話、BOPもやりました。朝から夜まで働いて、仕事終わってからもレシピを見せて細かい点をディスカッションしたり。寝るときも頭の中でビールのイメージが離れないんですよ。いわて蔵の原型を作ったのは、この時だったと感謝しているんです。
 
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僕が「東北魂プロジェクト」を続ける理由

 
学生時代に僕は新しい世界を求めて、東京の大学に行きました。でも大学の友人は、帰省してお土産を買ってきては、自分の故郷を自慢しあうんですよね。それを見たとき、実家を自慢できるってすごいな、って思ったんですよ。木内さんの話に戻るけど、僕らは世界レベルの商品を作っているからという誇り。これって田舎に必要なことだと気づかされました。だから、地元の人が誇りを持って自慢してくれるような、美味しいビールを作らないといけないと。一関の地ビールフェスティバルも、今年で 18 回目を迎えて全国から人が来てくれるようになったんですけど、これも一関の人々が、俺らのイベントは、日本全国で人気のあるイベントだ、って自慢できるようにしようと、始めたんですよ。
 
木内酒造の谷さんや現AOIブルーイングの高さん。元ヤッホーブルーイングの石井さん(現ISHII BREWING CO.)からはリアルエールを教わり、富士桜高原麦酒の天通さん、今は無き三次ベッケンビールの志村さんにはヴァイツェンについて教えてもらいました。普通に飲んでるときに「航くん、ヴァイツェンにホップ使いすぎ」とか具体的に教えてくれるんです。あと、1 年半うちに来てくれていたアウトサイダーブルーイングの丹羽さん、他にも・・・。人との出会いから多くのことを学びました。

こういった技術交流を東北のブルワリー同士でやろうと思ったのが、2014 年に「東北魂プロジェクト」を始めたきっかけなんです。ものを売ることが目的というよりは、技術交流がメインなんですよ。
 
でも一番は、醸造長の後藤孝則と出会ったことですかね。ずいぶん前に孝則と 2 人で、両国のポパイに行って、何杯か飲んで酔っ払っていたかもしれないんですけど、その時のヒューガルデンがすごく美味しかったんです。その時、孝則が涙ながらに「俺、こんなのを作りたい」って言って。そのとき、こいつセンスあるな、って思って。僕は木内さんのホワイトエールが好きなんですけど、僕も気づいたら泣いてて(笑)。
 
お酒ってなんのためにあるんだろう、お酒をなんのために作っているんだろうって思うこともあるけど、「人生を豊かにする」ものなんだと思う。普段言えなかったことを言えるようになったり、嬉しいっていう気持ちを素直に表せたり、本当は謝らなきゃいけないのを謝れたり。素直な気持ちになれる美味しいお酒を作り続けたいですね。いわての人に自慢してもらえるような。
 

「いわて蔵ビール」公式ホームページ

私の“きっかけ”ビール[1杯目] 木内酒造 木内洋一さん『アンカースチームビール』

私の“きっかけ”ビール[2杯目] 那須高原ビール 小山田 孝司さん『Orval(オルヴァル)』

 
★ 取材協力 「 Le petit L’ouest 北沢小西」
 
下北沢にある、クラフトビールの品揃え抜群の酒屋さん。店内で購入したお酒を試飲できる「角打ち」もできます。いわて蔵ビールの「きんくら」「あかくら」「くろくら」が飲めます!

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★取材後記(みつき)
 
飾らない人柄に男女問わずファンも多い佐藤航さん。人との出会いを大切にしている航さんだからこそ、ビール造りにもたくさんの素敵なブルワーさんとの交流が生かされているのですね。今回掲載できませんでしたが、東北復興の現状やアツい想いも伺いました。その一環として始めた社会貢献活動をしている「リバースプロジェクト」とのコラボビール「ヨイツギ」の記事もよろしければご覧くださいね! 次回もお楽しみに。

台湾クラフトビールを訪ねて 〜台湾のビア・シーンを牽引する「北台湾ビール」訪問と、台北ビア散歩

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台湾一の老舗ブルワリー、北台湾ビールへ

 

2015年6月、最新クラフトビール事情をリサーチすべく、台湾へと渡った。まず訪れたのは、台湾北西部の桃園(タオユェン)市にある北台灣麥酒有限公司(以下、北台湾ビール)。ここは、台湾で最も歴史のあるクラフトビールブルワリーである。一般の見学は受け付けていないのだが、今回は台湾の知人の取り計らいで特別に訪問を許可された。桃園市といえば、台湾の空の玄関口である台湾桃園国際空港のある場所。首都・台北から台灣高速鐵路(台湾新幹線)で19分ほどの、工業地帯を抱える人口 200万人の都市だ。ブルワリーは桃園空港から 1Km、新幹線桃園駅から 8kmほどで、やはり工業地帯にある。台湾ではブルワリーも工業地帯に立地しなければならないのだ。

北台湾ビールのブルワリー。正面が事務棟、右が倉庫、右奥が醸造所になっている。

北台湾ビールのブルワリー。正面が事務棟、右が倉庫、右奥が醸造所になっている。



ブルワリーではオーナーの溫立國さん、醸造責任者の段淵傑さんに話を伺った。

台湾では、2002年にWTO(世界貿易機関)への加入にともない、商業的な個人醸造が合法となった。溫立國さんはそれを機に「これからはクラフトビールの時代」と確信し、2003年10月に北台湾ビールを設立。溫さんのポリシーは、「台湾国産素材で台湾らしいクラフトビールをつくること」だという。従業員は4人で、年間醸造量はおおよそ60トン。発酵タンクは2000リットルが 5釜、1000リットルが 2釜稼働している。

溫立國さん(右)と段淵傑さん(左)。溫立國さんは、大同大學生物工程学部教授で、段淵傑さんの叔父でもある段國仁先生からビールの醸造知識を習得した。

溫立國さん(右)と段淵傑さん(左)。溫立國さんは、大同大學生物工程学部教授で、段淵傑さんの叔父でもある段國仁先生からビールの醸造知識を習得した。



■醸造設備見学

話を伺った後は、醸造責任者の段淵傑さんの案内でブルワリーの中へ。衛生的な環境の中で近代的な設備が稼働していたのが印象的で、工場内には酵母の培養室もあり、酵母の管理もなされていた。

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醸造設備。

醸造設備。



培養室では酵母を培養している。

培養室では酵母を培養している。



テイスティングする醸造責任者の段淵傑さん。

テイスティングする醸造責任者の段淵傑さん。



こちらは、出荷準備をしていた「5五 BEER」。北台湾ビールでは多くのコラボビールをてがけているが、これもそのひとつで、「台北一のおしゃれホテル」ともいわれるWホテル向けに限定醸造されているアメリカンIPAだ。

こちらは、出荷準備をしていた「5五 BEER」。北台湾ビールでは多くのコラボビールをてがけているが、これもそのひとつで、「台北一のおしゃれホテル」ともいわれるWホテル向けに限定醸造されているアメリカンIPAだ。



事務所には北台湾ビールで醸造しているビールのボトルがディスプレイされていた。

事務所には北台湾ビールで醸造しているビールのボトルがディスプレイされていた。



会社のロゴマークやボトルデザインに猫が使われているのは、オーナーの溫立國さんが猫好きだからだとか。

会社のロゴマークやボトルデザインに猫が使われているのは、オーナーの溫立國さんが猫好きだからだとか。



■いよいよ試飲!

工場見学の後は、待ちに待った試飲タイム。ここでは主なアイテムを試飲させていただいた。北台湾ビールは、2014年のアジアビアカップにおいて、「ベルジャンビール」カテゴリーの金賞と銀賞を受賞。各国から多くのビールが出品されるこのカテゴリーで、金、銀の独占受賞は快挙である。では今回試飲させていただいたビールをはじめ、北台湾ビールのラインナップの一部をざっと紹介しよう。

「經典(八)」Belgian Dark Strong Ale

まずはベルジャン・スタイルのアビービール、「經典(八)」。余談だが、「經典」はいわゆる仏教の経典ではなく、「クラシック」という意味。こちらはアルコール度数8%。しっかりとしたモルトと、アビービールらしい複雑でスパイシーなフレーバー魅力的。スパイスは使っていないらしいので、ベルジャン酵母に由来していると思われる。このビールは金賞を受賞している。

經典(八)

經典(八)



「經典(六)」Belgian Ale

アルコール度 6%の「經典(六)」もある。こうしたアルコール度数によるネーミングは 「Rochefort」 を彷彿させる。酵母は8%の「經典(八)」と同じものを使用。色は薄く、 SRM 6ぐらいだろうか。こちらもスパイシーなフレーバーが魅力的でモルトの甘味も感じられた。段さんが最も好きだというビール、「Orval」に通じるものを感じる。

經典(六)

經典(六)



銀賞を受賞したウイートエールの「雪藏白啤酒」を試したかったが、ブルワリーでは在庫切れ。こちらは夜の台北の街で楽しむことに(後述参照)。

 

「喜願小麥工藝啤酒」 Belgian White

「喜願小麥工藝啤酒」は喜願小麦50%と大麦50%を使ったベルジャンホワイト。小麦は100%台湾産のものを使用。「喜願」というのは台湾の代表的な小麦栽培組織で、食料自給率の向上を目指して活動している。色はヒューガルデンホワイトよりも濃く、SRM 6 程度。しっかりした小麦のフレーバーとベルジャンホワイトらしいスパイス感を感じたが、こちらも特にスパイスは使っていない。ちなみにこれ、段さんの自信作なのだそうだ。

喜願小麥工藝啤酒

喜願小麥工藝啤酒



「穀雨 (Taiwan Tea ale) 」Belgian-Style Pale Ale

副原料に台湾産のウーロン茶を使用したペールエール。ホップとウーロン茶のバランスがよい。実はこのビール、「北台湾ビール」のブランドでは販売されておらず、「啤酒頭 (Taiwan Head Brewers Brewing Company)」として流通。「啤酒頭」とは、特定の醸造所を持たない、いわゆるファントムブルワリーで、北台湾ビールもこれに参加している。

穀雨

穀雨



啤酒頭ではこの他に、アメリカンペールエールの「立夏」も販売しているが、これは北台湾ビールが醸造するアイテムではないためブルワリーには置いていなかった。(台北のビアカフェで飲むことができたので、後述参照。) 「穀雨」「立夏」など、二十四節季にちなんだネーミングがユニークだ。続いて「夏至」「立秋」もリリースが予定されているという。そのうち「立秋」については北台湾ビールが醸造を担当している。


さらなるビールを求めて台北の夜の街へ

 

充実の工場見学の後は、台北市内へ。ブルワリーで飲めなかった北台湾ビールと、啤酒頭の「立夏」を求めて夜の街に繰り出した。台北のビア事情はなかなかにアツい。店それぞれに個性があり、扱うビールには店主の好みが現れているようにも思う。今回目的のビールを求めて歩いた3軒をご案内する。

「家途中啤酒屋」 (Way Home Beer House)

まずは、MRT台北小巨蛋駅から5分ほどの、いわゆる角打ちできるボトルビールショップ、「家途中啤酒屋 (Way Home Beer House)」 に行ってみた。店名の通り、「家に帰る途中にちょっと寄って飲む」というコンセプトの店だ。こちらでは、冷蔵庫で気持ちよく冷えたビールを軽食とともに楽しむことができるのだが、残念ながらドラフトビールは置いていない。ラインナップとしては海外のビールが目立つが、棚の一角はしっかり北台湾ビールが占めていた。

家途中啤酒屋

家途中啤酒屋



棚の一角を占める北台湾ビール。左の「鳳梨(パイナップル)」と「柳丁(オレンジ)」はフルーツビールだが、訪れたときは、果物の旬が過ぎていたので生産は中止されており、在庫限りとなっていた。一番右の「獨立」(閃靈獨立啤酒)は、台湾のロックバンド「閃靈(ソニック)」が台湾独立建国のコンセプトで創作した際、その考えに共鳴して造ったコラボビール。ビアスタイルはヴァイツェン。第二弾のコラボビールはセゾンが予定されている。

棚の一角を占める北台湾ビール。左の「鳳梨(パイナップル)」と「柳丁(オレンジ)」はフルーツビールだが、訪れたときは、果物の旬が過ぎていたので生産は中止されており、在庫限りとなっていた。一番右の「獨立」(閃靈獨立啤酒)は、台湾のロックバンド「閃靈(ソニック)」が台湾独立建国のコンセプトで創作した際、その考えに共鳴して造ったコラボビール。ビアスタイルはヴァイツェン。第二弾のコラボビールはセゾンが予定されている。



こちらの店にも啤酒頭の「穀雨」は販売していたが、「立夏」は売り切れ。ということで、ブルワリーで飲めなかった「雪藏白啤酒」を飲んでみた。小麦が爽やかなヴァイツェンに近いビールだ。

雪藏白啤酒

雪藏白啤酒 (Wheat Ale)



「北義極品咖啡」(North Italy Ratting Coffee)

次はMRT小南門駅から10分ほどのビアカフェ「北義極品咖啡」で、「經典(八)」と「經典(六)」を。「北義」は「北イタリア」の意味で、イタリアンテイストのコーヒーにこだわっていることからつけた店名なのだそうだ。ここは、海外のビールを中心にドラフトで6タップほどを提供している。ボトルビールの販売も多く、冷蔵庫の中の物は店内で飲むこともできる。軽食もあり、台北ではお勧めのビアカフェのひとつだ。

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北義極品咖啡

北義極品咖啡



經典(八)經典(六)

經典(八) 經典(六)



「啜飲室」

夜のビア散歩はまだまだ続く。次はMRT忠孝復興駅から5分ほどのところに今年オープンした「啜飲室」。「啜」は日本語で「すする」と読むので、名前をからはあまり上品な印象を受けないが、台湾では「ゆっくり味わって飲む」という意味もあるらしい。20代~30代の若者が多く、モダンでおしゃれな店内。キャッシュ・オン・デリバリーでカジュアルに飲むことができる。ここでは啤酒頭の「立夏」のドラフトをオーダー。ホッピーで爽やかなビールだった。

立夏  (American Pale Ale)

立夏 (American Pale Ale)



さて、これで目的のビールはほぼ制覇。そしてなお、夜の台北のビアバー巡りはまだまだ続くことになるが……。台北ビアバーの詳しいレポートはまた次の機会にとっておこう。


台湾クラフトビール、今後の展開は?

 

1994年の日本の地ビール解禁から遅れること 8年、2002年に台湾でも地ビールが解禁された。それから10年以上が経ち、現在では 10社以上のクラフトビールメーカーがしのぎを削っている。食べ物が全般的に安くて美味しい台湾だが、クラフトビールは日本と同等以上の値段。つまり台湾ではまだまだ高級品なのである。それでも多くの若者がクラフトビールを楽しんでいる状況を目にして、もしかすると3年後には、日本よりも活気あるビア・シーンが展開されているかもしれないと感じた。クラフトビール愛好者としては、台湾の素材を使い、台湾の食事、気候、風土にマッチしたビールが今後ますます増えることを願うばかりだ。

啜飲室でクラフトビールを楽しむ若者たち

啜飲室でクラフトビールを楽しむ若者たち



●関連リンク

北台灣麥酒有限公司
https://www.facebook.com/NorthTaiwan

啤酒頭 Taiwan Head Brewers Brewing Company
https://www.facebook.com/taiwanheadbrewers

家途中啤酒屋 Way Home Beer House
https://www.facebook.com/wayhomebeerhouse

北義極品咖啡
https://www.facebook.com/NORTHITALYRATINGCAFE

啜飲室
https://www.facebook.com/chuoyinshi

北台湾ビールの買える店
https://www.facebook.com/notes/10151175438672689/

「世界に伝えたい日本のクラフトビール」最高賞に輝いたベアレンビールの軌跡を綴る『つなぐビール』発売!

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「自分の好きなビールをつくりたい」


ビール好きなら一度は抱く夢ではないでしょうか。
しかし実際に成し遂げるためは、お金と時間、スキル、相応のリスクを背負う覚悟が必要な話です。
ところが、東北地方で見事その夢を叶えたビール好きがいました。

岩手の小さな会社であった醸造所は、2015年4月に開催された「世界に伝えたい日本のクラフトビール」コンテストにおいて、全国200余ある醸造所の中から最高賞を獲得。「日本一のビール」と賞されるまでになりました。

授賞式

2015年4月2日に開催された「世界に伝えたい日本のクラフトビール」授賞式。藤原ヒロユキ氏(中央)の右隣が「ベアレン醸造所」の専務取締役、嶌田洋一氏


ベアレン醸造所の創立者のひとり、嶌田洋一氏。

かつては、どこにでもいるビール好きのサラリーマンだった嶌田氏が、脱サラして資本金300万円から始めたビール醸造所の物語がついに書籍になりました。

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『つなぐビール 地方の小さな会社が創るもの』

発売日:9月25日
出版社:ポプラ社
価格:本体価格1,400円+税
※書店によっては発売日が早まる場合があります。

【内容(目次より)】
第1章 32才男ふたり、会社を辞めてビール会社を立ち上げる
第2章 絶頂からどん底へ、ベアレンが変わった日
第3章 経営理念、ブランドビジョン、ルールをゼロから作る
第4章 東日本大震災、ビールは無力ではなかった
第5章 「場」を作り出し、まちを幸せに
第6章 「好き」の共感作り、オンリーワンの商品開発




スポンサーも専門知識も技術も持たないビール好きが始めた醸造所が、いかにして岩手のビール文化を作り、地元に深く愛され、やがて全国に知られるまでの醸造所になったのか?
創業当時は全くビールが売れずに苦労した日々など、数々の困難や試練を乗り越えて今日に至るまで、決して順風満帆とは言えなかったベアレン醸造所の歩みについて、嶌田氏自身の言葉で綴られた一冊です。
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著書発売によせて、嶌田洋一氏のコメント。

「書籍化のお話をいただいたとき、ついにそこまでの評価をいただけるようになったことに喜びを感じ、一緒に頑張っているスタッフやベアレンを愛して下さるお客様にも同じ思いを感じていただけると思い、筆をとることにしました。地方を元気にしようと頑張っている方や、地域の魅力を発信している方、起業を夢見ている方にも、きっと共感していただける内容だと思います」

 

ベアレンビールのファンはもちろん、地域の活性化や起業を目指す人には必読の一冊。読み終えた後に飲むベアレンビールは、きっとひと味もふた味も違ったものになることでしょう。

【著者プロフィール】
嶌田専務嶌田洋一(しまだ・よういち)
1967年、東京生まれ。ベアレン醸造所専務取締役。学生時代から酒の世界にはまり、あらゆる酒に精通する。2000年頃、以前からの友人(現社長)に地ビール会社の立ち上げに誘われ、脱サラして起業。現在はマーケティング、ブランディングを担当している。妻と3人の子どもと盛岡に暮らす。
■ポプラ社新刊案内
■Amazon取り扱い

9/25(金)発売『つなぐビール』感想レポ!!

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先日こちらの記事でもご紹介した通り、岩手県、ベアレン醸造所の嶌田洋一さんが御出版されました。

『つなぐビール 地方の小さな会社が作るもの』

つなぐビール

つなぐビール 地方の小さな会社が作るもの



2013年に設立10周年を迎え、今もなお好調に売れ続けているベアレン醸造所。その鍵となる『情熱』と『地域密着』について、ノンフィクションで語られている一冊です。詳細は山口さんがご紹介下さっているので、是非両方の記事をご覧ください(笑)

「世界に伝えたい日本のクラフトビール」最高賞に輝いたベアレンビールの軌跡を綴る『つなぐビール』発売!
http://www.jbja.jp/archives/10970

発売は9/25(金)、各方面で既に予約受付中でございます。
そんな中私…実は出版前に拝読させて頂きました(注:ちゃんと著書も予約購入済みですよ)。なので私は少しばかり感想を寄稿致します。

著書を読了後、つい胸が熱くなりましてご本人に感謝と感想を長文で送ってしまいました。それくらい、心に残るものがありました。
ベアレンの経営理念の一つに、「すべてに隠し事をしない、いつでも胸を張れる仕事をしよう。」という文面があるのをご存知でしょうか?この中でも嶌田さんの言葉で、包み隠さず描写されたストーリーが綴られていて、共に現場にいたような追体験さえ感じさせるのです。読み切った後に目頭が赤くなってましたよ、物語に吸い込まれます。

ベアレン誕生から現在に至るまで、嶌田さんが何を感じ、どう動いてきたのか。是非共に歩みを感じてみて下さい。さらには、スタッフの人柄や商品の誕生秘話、マーケティングやブランディングの実例などもあり。読み方多彩、読み応え十分です。ぜひご覧になってみてくださいませ。

最後に一つ。皆さん、人生9割損していると思います(笑)。あるすご~く美味しいビールをまだ体験しておられません。
…決まっているでしょう?
著書を読んだ後に飲むベアレンビールです!!
嶌田洋一さん
お読み頂いた皆様に最大限の感謝を込めて。

【Back Number】
Tasting report No. 27 KONISHIビール ガーネット・ルージュ
http://www.jbja.jp/archives/10857

【意外なビアスポット探訪】栃木のツインリンクもてぎでMotoGP開催中に飲める「最速ビール」

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思いがけない場所で飲めるビール&ビアスポットを紹介するシリーズ。
第2回(あってよかった)は、栃木県のサーキットで年1回、3日間だけ飲めるビールをご紹介したいと思います。



 「ツーリングの後に飲むビールは最高に美味しい」

仕事後に飲む1杯が至福の時間であるように、オートバイでツーリングを楽しんだ後に飲むビールは文句なしに美味しい。きっとジョギングでもフットサルでも卓球でも同じように美味しいのだろうけど、他のアクティビティと決定的に違うのは、飲んだらバイクに乗れないし、バイクに乗るなら飲めないということ。
さらに、運転の必要がないレース観戦やイベントでも、スポンサーとの関係やそもそも自動車関連の催しはバイクや車の来場者が多いこともあり、わざわざアルコールに力を入れることはほとんどありません。

しかし年1回、「オートバイを楽しみながらオリジナルビールも堪能できる」というビアラバーなライダー(子供ができて頻度は激減しましたが)には、夢のようなビアスポットがあるんです。

栃木の山奥にあるサーキット「ツインリンクもてぎ」

 

栃木県の南東部、茨城県との県境にある茂木町。緑豊かな里山の町に、世界最高峰のオートバイレースが毎年開催されている「ツインリンクもてぎ」という国際サーキット施設があります。
1_P1010329_1「MotoGP™ 世界選手権シリーズ 日本グランプリ」

MotoGPとは、オートバイレースの世界選手権シリーズ。世界各国をまわりながら全18戦が開催され、ポイント制で年間チャンピオンを決めるレースです。
二輪ロードレース最高峰のカテゴリーで、車でいえばF1。レース専用車の最高速は新幹線より速い350km/hにも達し、コーナーリングでは生身のライダーが最大64°のバンク(マシンの傾斜角度、つまり地上から26°)で膝どころか肘まですりながら、モンスターマシンを縦横無尽に操る世界です。
2_BN5A8747日本グランプリは毎年秋に開催され、ツインリンクもてぎには世界中からバイクファンが押し寄せます。今年は10月9日(金)~11日(日)の3日間に渡って開催され、昨年の来場者数を大幅に上回る約8万5千人が集う大盛況でした。

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P1010356_1期間中は場内で様々なイベントやショーが行われ、年に1度のMotoGP観戦を楽しみにしていたファンで埋め尽くされます。

このオートバイまみれの地で、MotoGP開催中にビアラバーのオアシスになっているスポットがあるんです。

 P1010292_1 「最速ビール」

醸造元は宇都宮の「ろまんちっく村クラフトブルワリー」。生産量日本一を誇る栃木産の二条大麦麦芽を使った「麦太郎」、「麦次郎」、「餃子浪漫」など、モルトがしっかり効いたビールで知られるブルワリーが、毎年MotoGP日本グランプリのために限定ビールを造っています。

P1010307_ビールの種類は「サイソクビール(FASTEST)」「ドッグファイト(DOG FIGHT)」「ブラックマーク(BLACK MARK)」、そして今年初登場の「グリーンフラッグ(GREEN FLAG)」の4種類。GPファンならこのネーミングだけでテンションが上がるはず。

P1010306_走行時間以外はブースやイベントを見てまわりながら広い敷地内を移動するためか、テイスティングセット(1,200円)より440ml(650円)のレギュラーカップの方が売れています。

2007年の出店から9周年。今年は日曜が雨だったのにもかかわらず、3日間で3,000杯も売れたとか。飲食とは関係ないイベントにおいて、大手スポンサードビールが至るところで旗を上げる中での3,000杯。年々リピーターも増え、もてぎに来るMotoGPファンにとってはすっかりお馴染みのビール屋さんです。

P1010458_1醸造長・山下さんが、渾身の力をこめて最大出力で仕込むというのがこの「最速ビール」。MotoGPファン歴なんと29年。

「ゲートオープンに合わせて毎朝7時~8時から営業して、終わったら醸造所に戻って翌日の準備。毎日2時間ぐらいしか寝られません(笑)」
「それでも365日の中で、一番楽しい3日間なんですよね」

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P1010586_1MotoGPは作り手の山下さんにとっても、外せない年1回の一大イベント。
長年観てきたファンだからこそ、特別な想いが込められているのが最速ビールなのです。そのレシピや味わいには、ネーミングだけに留まらないこだわりが光っています。ひとつずつ紹介しましょう。

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【サイソクビール(FASTEST):へレスボック、7%】



「1杯目はコレ!」という根強い人気のあるフラッグシップ。
日本(宇都宮)・オーストラリア・ドイツ・イギリスの麦芽に、アメリカ・フランス・チェコのホップ、イタリア・スペインの米と、レースを開催する9か国の原料を使って仕込むへレスボックです。

しっかりしたモルトの旨味や甘い香りに混じって、やや強めのホップの香りが押し寄せてきます。GP開催国のキャラクターが渾然一体となって味わいに深みを出していますが、後味は非常にすっきり。7%とボックならではのキック力を持ちながらも、ボディ感が少なくアルコールをあまり感じないので、油断しているとハイスピードで飲めるという、最速(で酔える)ビールです。

常陸牛の豚丼やすき焼き丼など、和風ガッツリメニューとも相性がいい

常陸牛の豚丼やすき焼き丼など和風ガッツリ料理とも好相性



続いて「ドッグファイト」は、シトラ、シムコー、モザイク、ソラチエース、チヌークなど柑橘系の香りと強い苦みが特徴のホップを使った濃厚なIPA。

右【ドッグファイト(DOG FIGHT):IPA、6.5%】 左【ブラックマーク(BLACK MARK):シュバルツ、5%】

右【ドッグファイト(DOG FIGHT):IPA、6.5%】
左【ブラックマーク(BLACK MARK):シュバルツ、5%】



煮沸段階の最後に投入する「ホップバースト製法」と、冷却中に投入する「ドライホッピング製法」の2段階に分けて投入することで、ホップの香りと苦みを余すところなく引き出しています。

ジューシーでしっかり味のから揚げには、フレッシュなIPAが良く合う

ジューシーで濃いめの味つけのから揚げに良く合う



まずグッと香るのがグレープフルーツのアロマ。それに瞬く間に追いついてくるのがレモンピールのようなシャープなフレーバーと苦み。最初から最後まで、複雑なホップの香りと苦みが競い合うように追いかけあうさまは、まさにホップレースのよう。なるほど!と膝を打つネーミングです。

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一方「ブラック
マーク」は、漆黒の見た目からは想像できないキレ味とすっきり感のシュバルツ。甘味や酸味は控えめで、スタートではブラックモルトの香ばしさを感じさせつつも、フィニッシュまで口の中をスピーディに駆け抜けていきます。ぼーっとしているとたちまち置いていかれそうな軽やかさ。こってり味噌味のもつ煮とも相性ぴったりです。

そして今年初登場の「グリーンフラッグ」


【グリーンフラッグ(GREEN FLAG):セッションIPA、4.3%】

【グリーンフラッグ(GREENFLAG):SessionIPA、4.3%】



サザンクロス、ワイメアなどNZ産のホップを使い、シトラス系の爽やかな香りと苦みもしっかり感じられるセッションIPA、モルティなビールが揃う最速シリーズの中ではちょっと毛色の違う味わいです。天気が良ければ真夏日になるもてぎ。熱戦を繰り広げるレースの初戦にピッタリ!
1杯目に飲めば目の前のコースがクリアに開けて、セッション開始を告げてくれる、ドリンカビリティの高いビールに仕上がっています。

人が集まる場所に旨いものあり。料理も充実

 

これら4選手を引き立てるフードブースも充実しています。3_P1010375P1010289_! P1010399_1 P1010468_

P1010320_ P1010322_1ご当地グルメから世界各国の料理、MotoGPのチームシェフ監修メニューも。栃木の名産品やサーキットオフィシャル名物もあり食べ歩きも楽しい。

気になっていた「タイヤカスさきいか」×ブラックマーク。ビールのすっきり感で生臭さが際立つというブラックマーク(スリップ痕)を残してくれたので、これはあまりおすすめできないやつ



そしてまたブースに戻りビール補給

そしてまたブースに戻りビール補給



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毎年金曜朝イチに来て「最速ビールを飲んでからMotoGPが始まる」と言ってくれる人や、「ただいま!」「今年も来たよ!」とすっかり顔を覚えて声をかけてくれる外国の人、そんな国境を越えたリピーターに愛される最速ビール。そんなふれ合いも楽しみに来ていると、山下さんは言います。

「今年はペドロサ(ホンダ直轄ワークスチーム「レプソル・ホンダ」の選手)が優勝したから、決勝戦が終わった後に来て、レプソルカラーのボトルで乾杯してくれたお客さんもいてね。そういうのを見るとたまらなく嬉しくなりますね。レースの状況で売れ行きが偏ったりはしますが(笑)」。

 

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チームをイメージしたラベルのボトル(1本620円)。全部で10種類バリエーションがあるので、好きなライダーやチームで選ぶこともできます。
ちなみに山下さんは、バレンティーノ・ロッシ選手(ヤマハ直轄ワークスチーム「モビスターヤマハ」)のファンだそうで、

現時点でタイトル獲得に一番近いライダー#46 ロッシ選手

現時点でタイトル獲得に一番近い#46 ロッシ選手



P1010625_!一見同じチームラベル(左と右)に見えて、ライダーのイメージによって微妙にアクセントカラーを変えています。芸が細かい!ラベルのデザインも毎年リニューアル。

P1010394_1ビールとバイクという、自分の好きなものが共存している空間。
それを楽しみに訪れる、大勢のリピーター。山下さん自身がこの雰囲気を純粋に楽しんでいるんです。だから、ビールもとびきり美味しい。

朝イチで、レースの合間に、帰り際に、たびたびブースに寄り、ビールを飲みながらレースや選手について話し、また明日!といって別れる――。

まるでMotoGP村の街角ビアパブといった雰囲気。筆者も5年前から通い続けていますが、RPGゲームでいえば完全にセーブポイントです。

P1010392_!

画像は期待の新人ブルワー小針さん

直営ブースは3カ所あり、ろまんちっく村や宇都宮のブルーパブ『BLUEMAGIC』のスタッフがサポートしている。画像は期待の新人ブルワー小針さん



クラフトビールに興味がある人でなくても、ここに来てろまんちっく村ブルワリーを知り、改めて道の駅の醸造所まで飲みに来てくれる人がいたり(施設内に宿泊設備がある)、ビールのイベントとはまた違う喜びや新しい絆が生まれるという最速ビール。こうしてブルワーもファンも、また来年のMotoGP祭りに期待を寄せつつ、今年のもてぎセッションを終えます。

 
※ちなみに冒頭で「3日間だけ飲める」と書きましたが、厳密には宇都宮市内の『BLUE MAGIC』や、道の駅ろまんちっく村の飲食店でも在庫がある限り飲めます。さらに10月15日~開催中の「大江戸ビール祭り」(10月15日~18日シーズンⅠ)でも在庫限りで「グリーンフラッグ」が登場とのこと(名前は変更)
チャンスがある人は、是非!

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…とはいえサーキットのこの空気の中で飲めるのが最上級の幸せだと思う。雰囲気で美味しさ2割増し



取材協力:
道の駅うつのみや ろまんちっく村クラフトブルワリー

住所:栃木県宇都宮市新里町丙254番地
電話:028-665-8800
アクセス:JR宇都宮駅から「ろまんちっく村行」バスで約35分
東北自動車道、宇都宮ICより車で5分
開園時間:8:30〜18:00(レストランは10:00~21:00、L.O.20:30)
※季節により変更があるため、詳しくはお問い合わせ
定休日:第2火曜日(祝日の場合は翌日)
ホームページ:http://www.romanticmura.com/
公式facebook:https://www.facebook.com/romanticmura

オーストリアのビール「GUSSWERK:グスヴェルク」に大注目

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オーストリアのビール「 GUSSWERK グスヴェルク」が面白い。

伝統的な「ヴァイツェン」や「ウインナーラガー」、そして「シュタインビア」(昇温の際に焼いた石を釜に入れる)や「ラドラー」(ビール+レモネード)やニガヨモギを使ったビール「ブラックベティー」、さらにはIPAやインペリアルスタウトなど12銘柄の多彩なビールを造っている。

そして、今回非常に興味深い銘柄の輸入も始まった。
それは、
淡色系のコーヒービール「デオダート・エスプレッソビール」
グルテンフリービール「ツムヴォール・グルテンフリー」
ブドウ果汁を使用した「セレヴィナム・グレープビア」
さらに
アルコール度数10.9%のバーレイワイン「ディエスイレ・バーレイワイン」と
ピート麦芽を使用し、シェリー樽とオーク樽でエイジングした14.5%のストロングビール「クリンナヴィブル・ウイスキービア」である。

樽熟成ビールの「クリンナヴィブル・ウイスキービア」はアラン蒸留所の樽を使用し、スイスの国境近いKummenbergという山に掘られた貯蔵庫で熟成させるという念の入れようだ。
スモーキーなフレーバーが心地よく、しっかりとしたボディとアルコールの暖かさが楽しめる。リッチでグラマラスなビールである。

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ディエスイレ・バーレイワイン(左)と
クリンナヴィブル・ウイスキービア(右)
リキャップできるボトル入り。

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チビチビとゆっくり味わいたいクリンナヴィブル・ウイスキービア。



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本格派ビール雑誌「ビール王国」発売中。

Fujisan.co.jp「ビール王国」 

楽天ブックス「ビール王国」 

アマゾン「ビール王国」 

ステレオサウンド

取材風景やこぼれ話はフェイスブックでもご覧になれます。
https://www.facebook.com/beerkingdom.jp?fref=ts

「藤原ヒロユキのBEER HAND BOOK」をはじめ藤原ヒロユキのビール関連書籍は「アマゾン:藤原ヒロユキ著書」でお買い求めいただけます。

※お店のメニューや営業時間、イベントの内容などの掲載情報については、予告なしに変更されることがありますので、念のためお店やイベント・サイトなどをご確認の上ご来店・ご来場くださいますようお願い申し上げます。

*告知は、本サイト以外でも行われている場合がありますので、すでに満席や売切れの場合もあります。御了承下さい。

私の“きっかけ”ビール[4杯目] 欧和 今井礼欧さん『 ツム・ユーリゲ アルトビー ル 』

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一杯のビールとの出逢いが、人生の転機に。ビール業界の第一線で活躍している人にインタビューし、「私の“きっかけ”ビール」について語っていただきます。

四回目は、ベルギーで唯一の日本人醸造家で、自社ブランド「欧和( OWA )」を生み出した今井礼欧さん。欧和のビアスタイルに影響を与えたのが、デュッセルドルフ駐在員時代に飲んだ『 ツム・ユーリゲ アルトビール 』でした。

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ノーベル賞を目指してた!?「超理系」大学時代に転機


研究者を目指して東京理科大の理学部化学科に入学しました。今井礼欧(れお)の名前は、江崎玲於奈がノーベル賞を獲った日に生まれたことから付けられたんですよ。大学1、2年までは、朝から晩まで勉強してました。でもあるとき、「これは道のり長いな」と気づいたんです。生きているうちに獲れない人生は嫌だなと思いはじめて。

そんなときに、サッカーの「J リーグ」が開幕したんです。高校もサッカー部で元から好きだったこともあって、地元横浜マリノスの応援に熱中してました。サッカーバーも出てきた頃で、そこでは普段知り合えない仕事の人とか、幅広い年代の人と知り合えるんですよ。ビールやカクテルをきっかけに人が集まってくることがすごく新鮮に感じて、サッカーバーを開きたいなと思い始めたんです。

カクテル研究会では商才を発揮


サッカーバーを開きたいって夢はあったけど、当時はビールにこだわっていなかったんです。勉強をしようと思って作ったサークル「カクテル研究会」に、バーテン経験者が入ってきたりして。僕も影響受けて、バーテンダースクールに通っていましたね。かなり本格的だったので、企業にバーテンダーを派遣したりして、アルバイトの必要がなかったですね。

海外駐在先でアルトビールと出会う


大学卒業後、大手ビール会社に就職して、自ら希望して外食事業部に配属されました。店舗経営を学びたかったんです。飲食店で接客していて、自社の商品の作り手に会ったことがないなと、ふと思って。「美味い」「不味い」と言われても、どこか遠い感じがしていたんですよね。その時なんですよ、「自分で作りたい」と思ったのは。そんな想いを抱えていた入社 3 年目に、ヨーロッパ駐在の話があったんです。支店があったドイツのデュッセルドルフで、このアルトビールと出会いました。

アルトビールは好きなのがいくつかあるけど、この『ツム・ユーリゲ』は、苦味がしっかりあるタイプ。現地ではこんな感じの小さいグラスで飲むんですよね。実はこのアルトビールの味が、『欧和』の原点になっているんです。

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会社を辞めてスコットランドで酒造りを学ぶ


ドイツに 2 年駐在している間、大学に行って醸造学を学びたい気持ちが固まっていて、会社を辞めて、スコットランドのエジンバラにある、ヘリオット・ワット大学に入りました。まだその頃はビールって固まっていなかったので、蒸留酒も学びたくて。蒸留酒を学べる唯一の大学だったので、そこを選んだ感じです。

1 年学んで、最初に造ろうと思ったのはビールでした。技術者の作り方とか想いが味を定義することと、人を集められるのはやはりビールなのかなと思って。で、いきなりドイツで就職活動開始(笑)。ドイツの北から南まで 20 軒は回ったかな。

20 軒回って選んだ“最高の”醸造所でビール職人として働く


やっぱりお酒を出しているところまで自分で見たかったから、レストランが併設されているところは結構あるので、さらにホテル付きという醸造所に絞って回りました。僕の中で最高だと思ったのが、バイエルン州レーゲンスブルグの Prösselbrau(プレッセルブラウ)という醸造所。そこで 2 年間社員として働いていました。

140 年前から続いている家族経営の醸造所で、おじいちゃんの代から味が変わってなくて。自分の造ったビールを目の前で飲んでくれているんだけど、半年、一年ぐらい働いていると自分の存在をそこに感じられなかった。20 軒回って、ビールも人も気に入って、最高の醸造所だと思っていただけに、目的を見失った感じもあったんです。

もともと、ビールに限らず世界中のお酒を現地で造りたいっていう想いがあったから、メキシコでテキーラ造るのもいいかな、なんて思ったんだけど、隣の国のベルギーに自然発酵のビールなど様々なビールがあるというので興味を持ったのが、今の『欧和』を立ち上げるきっかけでした。

「フォアグラ」より「ご飯」のようなビールが理想


『欧和』を造り始めて 9 周年を迎えますけど、はじめの 3 年はフォアグラのような、印象に残るビールの味を目指していました。でも続けているうちに、本当に自分が目指すのは、インパクトを残しつつもおかわりしたいビールだと思ったんです。お米というかご飯のような、何杯飲んでも飽きないビールに近づけたいと。

「美味しい」にも色々あって、その裏にある意味としてどう捉えるかですよね。僕の場合は、ホップのストレートな苦みがこないっていうのかな、麦芽の焦がした苦みはあって。苦みっていう表現も、ホップから来ているのか、焙煎麦芽から来ているのかで違いますし。

夢はたくさんあって、釣竿を 100 本持っている感じ(笑)


これからやりたいこと? 実は 100 位ありますよ(笑)。釣竿を 100 本下げていて、引きがあったものを釣り上げていくイメージですかね。そこが日本とかヨーロッパだとかは意識していなくて、世界中のお酒を現地で造りたいんです。もちろん引きがあった時のために、勉強や準備はしています。夢のひとつに、鯛焼き屋さんやりたい、っていうのがあって。ベルギーでもイベントで作ったりして結構好評なんですよ。実はロゴだって作っているんです(笑)。

お酒で言うと、日本酒、ウイスキー、テキーラを現地で造りたいですね。近いうちに実現するものもあります! もちろん準備はできているので・・・楽しみにしていてください。

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日本で開催された鯛焼きイベントでは柚子ランビックの柚子を白あんにする贅沢さ!



「欧和ビール」公式ホームページ

 

★ 取材協力 「 ビアバー sansa 」

今年 3 周年を迎える赤坂のビアバー。店主の橋本さん(写真左)がセレクトした国内外のクラフトビールが、個性に合うグラスで提供されます。ビールとのペアリングが考えられた、旬の食材を使った創作料理も秀逸。* 今回のビールは取材用のため、お店では提供していません。

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★取材後記(みつき)

いつもふんわりした笑顔の今井さん。今回お話して、海外で活躍するサッカー選手のような、「超!仕事人」の印象が加わりました。「自分がそこで何を生み出せるかをきちんと語れる人は、どこに行っても仕事があると思う」とビシッと言い切る、人並み以上の努力もしているし、ハートの強さも感じます。100 の夢を叶えていく今井さんから、目が離せませんね! 次回もお楽しみに♪

★過去記事

私の“きっかけ”ビール[1杯目] 木内酒造 木内洋一さん『アンカースチームビール』

私の“きっかけ”ビール[2杯目] 那須高原ビール 小山田 孝司さん『Orval(オルヴァル)』

私の“きっかけ”ビール[3杯目] いわて蔵ビール 佐藤航さん『常陸野ネスト ホワイトエール』

【意外なビアスポット探訪】歴史を刻む町家の縁側で飲める、名水仕込みの「郡上八幡麦酒こぼこぼ」

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思いがけない場所で飲めるビール&ビアスポットを紹介するシリーズ。
第3回(に含めさせてほしい)は、名水で知られる岐阜県の郡上八幡で飲めるビールをご紹介したいと思います。




岐阜県のほぼ中央にある郡上市。
最近では竹田城に続く天空の城として話題の「郡上八幡城」と、数日間徹夜で踊り狂うというお盆の風物詩「郡上おどり」が有名ですが、日本名水百選の第1号に認定された“水のまち”としても知られています。

……と、さも当然のようにドヤ顔で書きながら、実は隣の愛知県に住んでいた頃から一度も訪れたことがありません。岐阜といえば北部の飛騨高山や白川郷まで抜けるか、はたまた長野寄りの中津川や恵那か。筆者の中で中部は完全に抜け落ちたスポットでした。微妙に近場だとなかなか行かないアレです。
しかし一昨年のビアフェスで、郡上を訪れるきっかけを得ました。

「このブラウンエールを生まれた土地で飲んでみたい」

そして、ようやく人生初の郡上八幡へ。

 

ローカル鉄道に揺られ、旅情という前菜で腹ごしらえ

 

始まりは名古屋。

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しかし看板は岐阜



実家に前泊して名鉄岐阜行きで来たので便宜上ここからですが、東京から来ても、大阪から来ても、まずは名古屋を経由します。名古屋からはJR特急「ワイドビューひだ」で40分(岐阜駅から約20分)で美濃太田駅へ。

P1010748_1ここで岐阜のローカル電車「長良川鉄道」に乗り換えます。美濃太田が始点なので迷うことはありません。ただし整理券方式のワンマン列車なので、乗り方に迷うことはあるかもしれません(ワンマン列車の乗り方はコチラ

P1010732 ここからガタゴトとディーゼル列車に揺られ、長良川沿いを1時間20分かけて北上します。長いです。長いですが、車窓からは変化に富んだ景色が流れるので鉄道マニアでなくても楽しめます。

季節は10月。どこまでも広がる黄金色の田んぼ沿いにひらひら揺れるコスモス、色づき始めた長良川渓谷や、深く碧い清流のせせらぎ、山小屋風の質素な駅舎――。
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初めて見たはずなのにどこか郷愁を誘うのどかな田園風景が流れ、窓の外をぼーっと眺めているだけでも疲れた心を解きほぐしてくれます。さすがに飽きたら目を閉じましょう。ここでするうたた寝は、最高に心地よいはず。
P1010747_1この80分は、日常の煩わしさを忘れ去り、非日常に入るために必要な時間。
ビールを美味しく頂くための準備、前菜として旅情をたっぷり味わいましょう。
P1010752_1そして郡上八幡駅。
長良川鉄道の代表駅なだけに、年季を感じながらも整えられた駅舎です。駅を出たら左手、郡上八幡城方面に進みます。ここから徒歩15分。タクシーやバスもありますが、時間に余裕があればここは是非散策で。郡上の情緒あふれる街並みを楽しむと、ビールがますます美味しくなります(駅に分かりやすい観光Mapがあるので入手しておきましょう)
P1010755_! P1010759_!P1010761_!醸造所まで続く道は、お米屋さんや郡上名産の郡上みそ、酒蔵など、昔ながらの個人商店が軒を連ねるメインストリート。街の中心を貫く長良川の支流、吉田川からあちこちに水路が張り巡らされ、家々の裏手を流れています。

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町中に水路や水舟(木や石でできた生活水槽)が点在するが、この日は真っ先に目的地に向かったので撮れず。醸造所より郡上八幡城方向に向かうと、小京都と呼ばれるに城下町や寺社・文化財が観られる


江戸時代から漢方堂として使われていた町家でなごむ

 

そぞろ歩くうちに町家「玄麟」に到着。P1010762_! P1010771ここは「郡上八幡麦酒こぼこぼ」醸造所の他に、雑貨店やバルなど数軒が入居する町家です。周辺と馴染みすぎて通り過ぎてしまいがちですが、クラフトビールのノボリと食品サンプルのビールがひっそり主張しています。

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うなぎの寝床のような細長い通路を抜けると、奥は吹き抜けの中庭。中庭に面してテイクアウトのカウンターがあります。
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「ビールや泡の微妙な色の違いを再現するのに職人さんが苦労したそうです」と醸造長の松本さんが言うのも納得の再現性の高さ

ここにも郡上八幡名物、食品サンプルのディスプレイ。「ビールや泡の微妙な色の違いを再現するのに職人さんが苦労したそうです」と醸造長の松本さんが言うのも納得の再現性の高さ



中庭に抜けると世界が一変。表通りの賑わいが嘘のようにピタリと止み、水音だけが響く静かな空間が広がっています。

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松やツツジ、石灯篭のある昔ながらの中庭。もちろんこの席で飲むこともできる



屋内の飲食スペースには、通路手前にある入口からお邪魔します。
P1060667_!P1010792_!「お邪魔します」としか言いようがない、この“おばあちゃんちに来た”感。
飲食スペースは純和室。縁側に腰を落ち着けると、それだけでほっとするのが日本人です。この町家は、かつて寛政年間(1789年~1801年)から明治20年ごろまで漢方医を営んでいた「稲葉家」の邸宅を改築したもので、「玄麟」は代々受け継がれてきた屋号だそう。

実は郡上八幡に数多くある町家は観光地化されたものではなく、生活感のあるものばかり。この和室も長きに渡り、多くの人が集い、語らい合ってきた空間。人の暮らしに根ざした場所が落ち着かないわけがありません。ここを隣のカフェと共有しています。

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そのため、カフェメニューを注文することも可能



早速、中庭を眺める特等席の縁側で。

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クリームエール(550円)。未成熟のパッションフルーツのような青々しい香りに穏やかなモルトの風味、そしてナチュラルな炭酸。2杯目のビターエールもやさしいホップの香りで、苦味は穏やかにきいています。そう、こぼこぼビールを飲んで真っ先に浮かんだ形容詞は「やさしい」。町家の環境とはほど遠いビアフェスの会場で飲んだ時もそうでした。

その秘密は「水」にあります。
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理想のビールに適した水と、里山暮らしに惹かれる

 

「郡上八幡のこの水でビールを造りたいと思ったんです」

手がけるビールと同じように、柔らかな物腰で話してくれたのは、こぼこぼの醸造長で店主の松本徹哉さん。

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数年前まで岡山県で会社員をしていた脱サラブルワーです。趣味で始めたというホームブルーイングは20年余り。会社のイベントなどでオリジナルのビールを提供しているうちに、いつか自分のブルワリーを立ち上げる夢を描くようになったそうです。しかしなぜ郡上で?

「長年ホームブルーイングをしていた経験から、特に“水”にこだわって土地を巡りました。倉敷、京都の丹波、滋賀、長野、地元の東京……。そして辿り着いたのが郡上八幡です。郡上八幡周辺には石灰岩が造る鍾乳洞がいくつも存在していて、石灰岩の影響でカルシウムが溶け込んだ、やや硬度の高い水が生活用水として日常的に使われています。これが僕のビールを造るのにぴったりだったんです。どうぞ、これを飲んでみてください」

 

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そういって手渡された水のグラス。キッチンの蛇口をひねって出てきた水道水です。その瞬間、頭を過ったのは“違いがわからなかったらどうしよう”という不安。 筆者は水に対してのこだわりがありません。こだわりがないため、飲みなれていない硬水はむしろ苦手です。不安に思いながら口をつけると……。

違う! 違いがわかる!!(良かった)

水が「やわらかい」、そして「ほんのり甘い」んです。
といっても喉にひっかかるほどの違和感はなく、口当たりがマイルドで、あくまでも「やわらかい」。やや硬水ということが普通の水道水で実感できます。

「まずこの水に惚れ込み、そして郡上の町の人や自然環境に惹かれました。僕のように縁もゆかりもない、外から来た人間に対しても、町全体で受け入れてくれる。歓迎してくれるあたたかい空気がここにはあったんです」

ビールを造ることに加えて、家族で腰を据えて暮らすことを考えたときに、郡上八幡の空気は安心感をもたらしてくれたそう。さらにIターン移住の受け入れに積極的な自治体のサポートもあり、町家の物件はトントン拍子に決定。住宅の確保に苦労したものの、退職直後の2012年秋に移住して里山暮らしを始めました。そして2013年の夏にブルワリーがオープン。

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ビールはライトなものからじっくり味わうタイプまでカバー。この中から飲みごろの6種類がつながっています。小ぢんまりとしたお店ながら、幅広いラインナップです。そこには松本さんがもうひとつ気に入ったという醸造所の特徴が関わっています。それは、地下にある室(むろ)。

P1000827_1もともと食品などの貯蔵庫として使われていた地下室がビールの発酵、貯蔵に使えると思ったそうです。あくまで手作りのホームブルーイングを礎とするこぼこぼのビールは、大型の発酵タンクを使わない樽内発酵。全て「ユニケグ」と呼ばれる発酵・熟成・貯酒を同時に行う小型の樽で醸造されています(酒税法上は「リキュール(発泡性)」です)

「外気の影響を受けにくい地下室は年間を通して温度変化が少ないので、発酵スペースの温度管理がしやすいのです。発酵を終えたビールは樽ごとに併設の冷蔵室に移され、汲み上げられるその時まで樽の中で低温熟成を続けることができるので、ラガーのように、すっきりとした味わいを出すことができます。17Lのユニケグ5つで85Lと1回の仕込み量は少ないですが、小回りがきくのでさまざまな種類を造ることができるんです」

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地下の樽から1階のサーバーまで直接つながっているので、まさにそのままの状態のビールが届きます。郡上の名水と地下室、極小規模のユニケグ醸造が、こぼこぼビールの秘密(マイクロブルーイング方式の開業は、川崎のブルーパブ『ムーンライト』にコンサルティングを依頼)。

「地下室では常に13~15種類のビールを仕込んでいます。もうすぐ『IPA』と半年寝かせた『ベルジャン・デュッペル』が飲みごろですよ」


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「来るたびに違うビールが飲める。それが楽しみでね。ここに写真を飾らせてほしいって頼み込んだんですよ」というのは岐阜市のフォトグラファー武藤さん。壁には長良川鉄道沿線の四季の写真が飾られている



P1010804_P1070009_1 P1070054_!料理は人気の名物「イングリッシュ コテージパイ(600円)」をはじめとして、岐阜名産、明方ハムの醤油フランクや、地元産の野菜を使った軽食が中心。冬場は岡山から取り寄せる、ぷっくりとした日生(ひなせ)の蒸し牡蠣や、甘味の濃い地ネギ焼きが登場します。
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どの料理もリーズナブルながら、ひとつひとつ丁寧に仕込まれた味。

――ところで、『こぼこぼ』の名前の由来とは?
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「酵母の“こぼ”です。酵母たっぷりの手作りビールと酵母を使った料理を楽しんでもらいたいなと思って。将来的には妻が作る天然酵母のパンも出せたらと思っています」

酵母たっぷりで、こぼこぼ!
音の響きと字形のやわらかい雰囲気が、ビールの個性も表す見事なネーミングです。こぼこぼと水が湧き出る音のようにも聞こえます。酵母の働きに適した水が流れる郡上は昔から味噌や醤油、日本酒など発酵食品の名産地。さらに、パンとビールの相性がいいのはビアラバーには知られた話です。
奥様のことを話すとき、ちょっと照れていた松本さん。奥様が愛情をこめて作る天然酵母のパンは、こぼこぼビールの美味しさを引き立ててくれるはず。

 

郡上の名水で仕込むビールが、人と町を結ぶ

 

P1010789_2この日本人には申し分のない空間で、やさしいビールをいただく。何よりもそれが1番のおすすめですが、県外から来る人にはそれなりの距離があります。
他にはどこで飲めるのでしょうか?

「最近取扱いがあったのは名古屋だと『ヒンメル』、『KEG NAGOYA』。関東では『Craft Beer Server Land』(神楽坂)や最近オープンした『Craft Beer Bar 淡島倉庫』(世田谷)、横浜だと『Sakura Taps』です」

――イベントなどに出されるご予定は?

「仕込みとお店をほぼ一人で切り盛りしているので、なかなか外に出るのが難しいですが、少しでも多くの人にこぼこぼビールを飲んでもらうために、少しずつ動きたいと思っています。まずはボトルをネットで購入できるようにしたいですね」

P1010826_!1つ注意したいポイントがあるとすれば、あまりの居心地の良さについ時間を忘れてしまうところ。風の冷たさにハッとしたら、昼過ぎから4時間も滞在していました。長居しすぎて日が暮れ、この日は観光できませんでしたが、松本さんおすすめの郡上八幡の見どころは?

 「やはり郡上の町を一望できる郡上八幡城がおすすめです。あとはこの町全体の雰囲気でしょうか。ぶらぶら散策するだけでも楽しいですし、いろんな場所で食品サンプル作りもできます。冬場は冷え込むので、カーボンヒーターと石油ストーブでお部屋を暖めてお待ちしていますよ」
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そぞろ歩きのお供には、テイクアウトのこぼこぼビールを(1杯500円)。
秋も深まり、朝晩の冷え込みが厳しくなってきた今日この頃。もうしばらく紅葉が楽しめそうな郡上でそぞろ歩きビールはいかがでしょう?

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このまま1泊して帰りたかった(隣駅のみなみ子宝温泉に寄って)



 

取材協力:郡上八幡麦酒こぼこぼ
住所:岐阜県郡上市八幡町新町939 町家「玄麟」1階
電話:090-4626-2847
アクセス:東海北陸自動車道 郡上八幡ICから車で10分
長良川鉄道 郡上八幡駅から徒歩15分
営業時間:
月、金:17:00~23:00
土、日、祝日:13:00〜23:00
火、木:予約があれば営業
定休日:水曜日(祝祭日は営業)
※遠方からのご来店などでお時間が合わない場合はご相談ください。
※仕込み状況により変更があるため、詳しくはお問い合わせを。
公式HP公式facebookページ

Hodala(ホダラ)で飲み干そう!

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台北の代官山とも言われるオシャレとグルメの激戦区、MRT東門駅近くの「永康街」。昨年の6月、ここに新しいブルーパブ「Hodala (ホダラ)」が開店したと聞き、10月に訪問した。
カフェや雑貨ショップなどが立ち並ぶ永康街のメイン通りを少し入ったところに立地している。周囲の店に負けずオシャレな店内だ。
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16タップのほとんどがオリジナルビール

16タップのほとんどがオリジナルビール

開店時間よりも早く着いたが、オーナーの侯俊宇さんが快く迎入れてくれ、話を聞くことができた。

オーナーの侯俊宇さん

オーナーの侯俊宇さん

ブルワリーでは一回の仕込みは 100リットル、発酵タンクは12個あるそうだ。
ここでしか飲めないビールを提供したいため、今のところビアフェスなどへ出す予定はないらしい。

ブルーパブらしく、モルトの展示

ブルーパブらしく、モルトの展示


ホップの展示も

ホップの展示も

多くの種類のビールを楽しむために、フライトを 2セット注文した。全体的に表示されているビアスタイルに対して特徴が抑えめな印象はあったが、これが台湾の気候や食事に合うと思う。

飲んだビール。8杯で約4,000円

飲んだビール。8杯で約4,000円

今回は短時間の滞在になったが、次の訪問を約束して店を後にした。
ちなみに、「ホダラ」とは「飲み干そう」と言う意味だ。

  

BEER LINE

BEER LINE

各テーブルにタップはタップが設置されている

各テーブルにタップはタップが設置されている

次回はこのタップで自ら注いでみたい

次回はこのタップで自ら注いでみたい

ビールの後はすぐ近くにある世界的に知られた小籠包の名店「鼎泰豊」の本店もお勧めだが今回は永康牛肉麺の紅焼牛肉麺をいただき、次の目的地ビアフェス会場に向かった。

紅焼牛肉麺

紅焼牛肉麺

Hodala 精釀啤酒
https://www.facebook.com/hodalabrewery/

島根ビール ビアへるん矢野社長に訊く!【前編】

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1/8(金)~17(日)まで東京ドームでふるさと祭り東京2016が開催された。今年も日本各地からブルワリーが出店されていた。筆者もサポート活動の一環としてビアへるんのお手伝いをさせていただいた。お手伝いの合間や打ち上げの時間で、矢野社長に色々とお話を聞くことができた。その内容を2回に分けてお伝えしていく。

 

食で島根を覚えてもらうことにまだまだ課題を感じたふるさと祭り東京

 

木暮:ふるさと祭り東京を終えて、どのような印象をもちましたか?

矢野:出展3年目ですが、クラフトビールに興味のない方たちもいつもどおり多く、PRのやりがいも感じつつ、まだまだ伝える力、興味を持ってもらう力を足りなく感じました。関東や世界的なクラフトビールの流行と言っても、まだまだ一般的ではなく、伝える努力の必要性を感じさせられました。

ビールについては前年ちょっとプラスのお客様に飲んでいただきましたが、フードが非常に厳しく、食についてのお客様のシビアさを感じる結果となりました。また、ビールのPRに並んで、「しまね」を憶えてもらうという目標についても、しまねっことのコラボで一定の成果はあるものの、本来の食で「しまね」を憶えてもらうという目標は改善の余地ありです。

しかし、たくさんのサポーターの皆様の元気と賑やかさ、楽しそうな雰囲気のおかげで、『松江ビアへるん』、『島根県』の楽しさは伝わっていることと思います。

 

全国に矢野社長のファンは多く、イベントではしきりに声をかけられている

全国に矢野社長のファンは多く、イベントではしきりに声をかけられている(写真はH27.7取材時のもの)

 

木暮:ふるさと祭り東京では10日間でのべ50人のサポーターがビアへるんに関わったそうですが、これだけ多くのサポーターが集う理由にはどんなことがあるのでしょうか?

矢野:参加していただいている立場ですので、当たっているのかは分かりませんが、みなさんが楽しみに来ていただいているからだと思います。

たくさんの仲間と飲む楽しみ。話す楽しみ。知り合う楽しみ。また、お客様へ美味しいを伝える楽しみ。お客様へ楽しんでもらう楽しみ。喜んでもらう楽しみ。騒ぐ楽しみ。もっと効率よくビールをお客様に飲んでもらう楽しみ。もっと美味しく注ぐには考える楽しみ。客寄せをしてお客様に集まってもらう楽しみ。非日常の楽しみ。もちろん自分が飲む楽しみも。

楽しみ方はみなさんそれぞれがあると思いますが、それをみんなで共有していっしょに楽しもうというみなさんが集まってくれているのだと思います。

最初は「ビアへるん」というきっかけで集まったみなさんが、サポーターの無い時でもみんなで独自の活動もされているのが答えなんだと思います。

 

販売予約を開始すると一晩で予約が埋まってしまう『おろち』

 

木暮:ふるさと祭り東京の時期になるとクラフトビールファンから限定ビールおろちが入手困難となる話が出てきますが、このビールはどんなビールで、どうして入手が難しい状態なのでしょうか?

矢野:おろちは「ビールの中でしまねの清酒を再現する」というテーマを持ったビール(発泡酒)です。

具体的には、コラボ先の清酒蔵に、通常の清酒に使用する米麹を造っていただき、それを原料に使用、その上で清酒酵母も使用します。使用法は秘密!ですが、麦芽、米麹、ホップを原料に、酵母はビール酵母と清酒酵母を使用します。ポイントとしては、清酒酵母の居心地のいい状態をビールの中に造ってやることです。

入手困難な点については皆様に大変申し訳なく思っておりますが、生産量が少ないことが原因です。「それじゃあ増やせば良い」ということになりますが、発酵熟成に約半年かかることや、酒蔵さんに麹を造っていただくには、前年の夏に、そのための酒米を確保していただくことが不可欠となります。2016年12月出荷のおろちの米麹は、2015年8月に確保していただいており、この冬に麹を造っていただくので、すでに増産不可なのです。

また、最近は地酒のブームも起こりつつあるようで、酒米も不足気味で追加不可の状態です。今から準備して早くても2017年12月の増産からです。またそれまでに6ヶ月熟成用のタンクの増設も予定しております。お待ちの皆様、もうしばらくお待ち下さい。

 

今年は李白酒造とのコラボレーションだったおろち

今年は李白酒造とのコラボレーションだったおろち

 

木暮:おろちの魅力を惹きたてるにはどのようなグラス、温度で飲むのが最も良いのですか?

矢野:グラスは香りを引き立てる、赤ワイン用ワイングラスやヴァイツェン用のグラスがおすすめです。この場合は温度帯低め(10~15℃ぐらい)でもOK。
 
これ以上の温度だと、香りが自然と出てくるので、ピルスナーグラスなどのみ口が開いた形状でもよいと思います。熱燗はまだ試していません(笑)。

 

おろちについては増産の計画があることが判明。実現すれば、今までよりも入手が容易になりそうだ。後編では事業計画や今後の日本のクラフトビール業界についてのお話も。お楽しみに。

【2016年ビアへるん出店予定】

●2月
2/29 しまね家 李白おろち祭り(大阪市・しまね家)

●4月
日付未定 東京ビアウィーク(関東方面・詳細未定)
4/16~17地ビールフェスタinひろしま(広島県広島市)
4/21~24 大阪クラフトビアホリデー(大阪城公園)
4/29 呉みなとまつり(広島県呉市)
4/29~5/5 九州ビアフェスティバル2016大分(大分県大分市)

●5月
5/3~5 ひろしまフラワーフェスティバル(広島県広島市・中国地ビール協議会合同出展)
5/14 京都ビアフェス(京都市)
5/11~15 けやきひろば春のビール祭り(さいたまスーパーアリーナけやきひろば)
5/27~29 岡山ハワ恋ビアフェスタ(岡山県岡山市)

●6月
日付未定 山陰地ビールフェスタin松江(島根県松江市)
日付未定 地ビアフェス大山(鳥取県・大山)
日付未定 山陰地ビールフェスタin 米子(鳥取県米子市)
6/26 せるぽわ ビアへるん祭り(島根県松江市)

●7月
7/24~25 天神祭(島根県松江市)
7/29~31 松江水郷祭(島根県松江市)

●8月
8/11~14 九州ビアフェスティバル2016久留米(福岡県久留米市)

●9月
日付未定 けやきひろば秋のビール祭り(さいたまスーパーアリーナけやきひろば)
日付未定 茨木麦音フェス(大阪市茨木市)

◆ブルワリーData 島根ビール株式会社 ビアへるん
住所:島根県松江市黒田町509-1
電話:0852-55-8355
FAX:0852-27-7750
E-mail:beer@shimane-beer.co.jp
Homepage:http://www.shimane-beer.co.jp/

島根ビール ビアへるん矢野社長に訊く! 【後編】

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1/8(金)~1/17(日)、東京ドームで開催されていたふるさと祭り東京。その期間中に島根ビール矢野社長にお話を伺った。

前回に引き続き、矢野社長のインタビューをお届けする。

前編はこちらから➡島根ビールビアへるん矢野社長に訊く!【前編】

 

品質向上と人材の育成を目指して新たなステージへ

 

木暮:限定ビールの増産についてふるさと祭り東京の期間中にお話がありましたが、改めて今年の展望を教えてください。

矢野:現在の限定ビールは毎回タンク1本(約1200L)で製造のため、発売お知らせ後、すぐになくなる状態でせっかくビアへるんを飲みたいというお客様をお断りしている状態でした。

そのため、あえて新しい限定ビールなどの種類は減らして、タンク2本(2400L)を製造する方針としました。

今年は限定ビールなどもイベントや多くの飲食店様でも楽しんでいただきたいと思います。1月末発売開始の「ゆずフレッシュ」からタンク2本製造をスタートしています。自家栽培ホップの「ゼウスビター」(9月)、「おろち」(12月)以外はすべて2本製造の予定です。

 

今年は限定ビールの増産が決定(写真はH27.7取材時のもの)

今年は限定ビールの増産が決定!飲める機会が増えそうだ(写真はH27.7取材時のもの)

 

木暮:昨年は新聞紙上に過去最高の売り上げという見出しがありましたが、これまでと違い、なにか変化を感じたところはあったのでしょうか。

矢野:一昨年までと昨年で大きく違うわけではありませんが、商品の問い合わせやイベントについても、たくさんのところからお声がけをいただけるようになりました。クラフトビールが気になるお客様が、飲む方々にしても、提供する方々(飲食店、酒屋さんなど)にしても増えてきていることを実感し、ありがたく思います。

木暮:平成28年はどのような戦略をお考えでしょうか?

矢野:平成28年については、松江ビアへるんとしての品質向上と新商品開発のための戦力となるブルワーの育成・増員と現在いっぱいいっぱいの工場の生産能力を増加させるための設備投資を主として考えています。ある意味、次のステップへの準備年度と考えています。

木暮:現在、ブルワーは矢野社長を含めると3名ですが、今後は増員を検討されているとのことでしたが、どのような人材が適任なのでしょうか?

矢野:島根県のビールを造りたいと思ってくださる方。具体的には、島根県の味(醤油、味噌、味付け、食材などなど)や風土(気候、空気、季節、文化など)が好きな方、少なくとも、島根県に永久に住みたいと思ってくださる方です。

 

現在のブルワーは3名。 前列中央が矢野社長。後列1番左が谷ヘッドブルワー、その隣が友田ブルワー

現在のブルワーは3名。
前列中央が矢野社長。後列1番左が谷ヘッドブルワー、その隣が友田ブルワー。

 

その土地の魅力を伝えることができるか

 

木暮:島根県は現在、日本で下から2番目に人口の少ない県となっています。こうした人口におけるハンデのなか、17年間事業を継続してきたことは凄いことだと思います。これはこれから地方においてブルワリーを立ち上げようとするブルワーさんにとっても大きな励みになると思います。地方でやっていくために必要なこととはどんなことなのでしょうか?

矢野:地方でやる理由を常に考えることが、最も必要と考えます。理由が無いのなら、都市部(人口の多いところ)で開業するべきだと考えます。海外の美味しいクラフトビールがどんどん入ってきていることや、国内のクラフトビールもブルーパブや小規模ブルワリーが増えてきています。競争相手は今や世界になりつつあります。

地方でやる理由、日本でやる理由。それを表現できる独自性のあるビール。それをお客様に伝え憶えて頂き飲んでいただく伝達力。

それでこそ地方の魅力を伝えるビール「ローカルビール」としての造る理由となると思います。

 

温和な矢野社長。しかし、しっかりと先を見据え、動き出している

温和な矢野社長。しかし、しっかりと先を見据え、動き出している(写真はH27.7取材時のもの)

 

木暮:今後、チャレンジしてみたいことはございますか?

矢野:しまね色の新ビール!ネタ模索中です。

木暮:興味深いお話ありがとうございました。今後の動向も楽しみにしています!

 

昨今、盛り上がりをみせつつあるクラフトビール。ブリューパブをはじめ、新規のブルワリーも登場してきており、飲み手としては楽しみが尽きない。しかし、それは同時にブルワリーにとっては業界内での競争も激しくなることを意味している。しかも競争相手は国内のみならず、海外と多岐に渡っている。『自分たちのビール』を明確に表し、アピールしていくことが今後は重要になっていくのと矢野社長の話を聞いて感じた。

 

【2016年ビアへるん出店予定】

●2月
2/29 しまね家 李白おろち祭り(大阪市・しまね家)

●4月
日付未定 東京ビアウィーク(関東方面・詳細未定)
4/16~17地ビールフェスタinひろしま(広島県広島市)
4/21~24 大阪クラフトビアホリデー(大阪城公園)
4/29 呉みなとまつり(広島県呉市)
4/29~5/5 九州ビアフェスティバル2016大分(大分県大分市)

●5月
5/3~5 ひろしまフラワーフェスティバル(広島県広島市・中国地ビール協議会合同出展)
5/14 京都ビアフェス(京都市)
5/11~15 けやきひろば春のビール祭り(さいたまスーパーアリーナけやきひろば)
5/27~29 岡山ハワ恋ビアフェスタ(岡山県岡山市)

●6月
日付未定 山陰地ビールフェスタin松江(島根県松江市)
日付未定 地ビアフェス大山(鳥取県・大山)
日付未定 山陰地ビールフェスタin 米子(鳥取県米子市)
6/26 せるぽわ ビアへるん祭り(島根県松江市)

●7月
7/24~25 天神祭(島根県松江市)
7/29~31 松江水郷祭(島根県松江市)

●8月
8/11~14 九州ビアフェスティバル2016久留米(福岡県久留米市)

●9月
日付未定 けやきひろば秋のビール祭り(さいたまスーパーアリーナけやきひろば)
日付未定 茨木麦音フェス(大阪市茨木市)

◆ブルワリーData 島根ビール株式会社 ビアへるん
住所:島根県松江市黒田町509-1
電話:0852-55-8355
FAX:0852-27-7750
E-mail:beer@shimane-beer.co.jp
Homepage:http://www.shimane-beer.co.jp/


2月5日はふたこビールの日!1st Anniversary で乾杯しましょう!

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ビ–ルに愛された皆さまへ!

 

東京の世田谷区には、地元を大切に思う気持ちから生まれた素敵なビールがあります!

ふたこビール。二人の主婦の熱い思いから生まれた、二子玉川のビールです。

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2月5日(ふたこ)という素敵な語呂合わせから、会社を設立したのが、ちょうど一年前!

それからは地元や都内各地でのイベントに出店し、注目を集め続けてきました。

 

なにより、センスの良いパッケージデザインがお洒落で目を引きます。もちろん、ビールの味もハイセンスです!

コンセプトとネーミングが、この春・夏・秋・冬と一巡りする間、私たちビールファンを十分に楽しませてくれました! ありがとうございます!

 

そんなふたこビールの周年記念が開催されます。素敵な一年を振り返り、おいしく乾杯しましょう!

 

以下、インフォメーションです。

futako1st

ふたこビール周年記念祭のお知らせ

2月5日はふたこビールの日! 昨年のこの日、株式会社ふたこ麦麦公社を設立して1年になります。

あっという間だったけど、10年分くらいの経験が凝縮したような、いろんなことがあったこの1年。

くじけそうになったことも何度もありました。その度に、やっぱりずっと続けていこうと思ったのは、皆の美味しいねの笑顔です。

その笑顔に励まされてここまで続けてこられました。 これまでへの感謝と、これからもよろしくの気持ちを込めて、周年記念ビール「みかんエール」をはじめ、5種類のビールを用意しました。

日時:2016/2/5 各店営業時間内 麦麦にちなんで6時6分に乾杯します。(本当は朝にしたかったけど午後の6時です)

私たちはクラフトビアハウスラッシュライフさんで、一緒に乾杯して下さる皆さんをお待ちしています。気軽に声をかけてください。

場所:DORAFT CRAFT(二子玉川) ふたこビール5タップ http://drakin.net/c/index.html

Craft Beer House LUSH LIFE(桜新町) ふたこビール5タップ(各1樽 打ち抜き次第終了)

ふたこビール特別価格 ハーフパイント¥600パイント¥900(その他のビール・フードは通常価格)

http://www.lush-life.jp/

 

塊肉&麦酒BLOCKS中野店(中野) ふたこビール5タップ(樽打ち抜き次第)

ふたこビール周年特別価格(370mlグラス 600円) (その他のビール・フードは通常価格)

http://r.gnavi.co.jp/6m8kdvt80000/

 

5Tap Line up

1周年記念みかんエール

フタコエール

宇奈根ペールエール(UPA)

長い夜(FUTAKO STAUT)

ギャラクシーブラックIPA

 

ご不明点、お問い合わせは ふたこビールまで mugi@futakobeer.com

ふたこビール https://www.facebook.com/futakomugimugi/ http://www.futakobeer.com/

 

ブルワリーレポート 【山口地ビール編】

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鳴滝高原の麓にあるブランド名は山口地ビールで知られているやまぐち鳴滝高原ブルワリー。1997年9月に醸造を開始し、ドイツスタイルのビールを醸造しています。現在はピルスナー、ヴァイツェン、スタウト、ペールエールの4種類をレギュラービールとして醸造。どのビールも過去にモンドセレクションを受賞しており、特にスタウトは最高金賞を受賞しています。

鳴滝高原の麓にブルワリーはある

鳴滝高原の麓にブルワリーはある

「山口地ビールは美味しくなった!」

昨年、私の周囲からこんな声をたびたび耳にするようになりました。ちょうど同時期に関東のビールイベントで、山口地ビールのブルワーである北條氏にお会いする機会がありました。お話を聴いていくうちにぜひブルワリーを訪問し、その魅力をお伝えしたいと思い、現地を訪ねてきました。

レシピを見直し、ピアパブからの注文も増加

現在、ブルワーは山本氏と北條氏の2名。最近ではヘッドブルワーである山本氏の社内業務が多忙となり、醸造は主に北條氏が担当しています。北條氏はドイツで醸造の修行をした後に国内ビール会社でブルワーの経験を積んできた持ち主です。温和で柔らかな笑顔が親しみやすく、とても接しやすいブルワーさんです。

北條ブルワー(左)と山本ヘッドブルワー(右)の2名体制

北條ブルワー(左)と山本ヘッドブルワー(右)の2名体制で醸造している

周囲からの声を北條氏に伝えると「実は僕が入社する少し前にビールのレシピを変えたんです」と教えてくれました。より美味しいビールを造るために試行錯誤してきた結果、「美味しい」と言ってくれる人たちが増えてきているのです。最近では都内のビアパブへの出荷も増加しており、某ビアパブからはヴァイツェンが週に80ℓもの注文があったと言います。

過去にはかなり醸造量が減ってしまった時期があったそうですが、クラフトビール人気が高まっているなか、醸造量に変化が表れているか訊ねてみると、「今年は120㎘ぐらいですかね」と前年比で1.5倍増になったと答えてくれました。

左からピルスナー、スタウト、ヴァイツェン、ペールエール

左からピルスナー、スタウト、ヴァイツェン、ペールエール

醸造設備を増設と新たなビールの開発

山口地ビールでは生産量を増やしていくために今月にもタンクを増設することが決まっています。これまでは併設のレストランやお土産ビールでの消費が多い状況でしたが、今後はそれに加え、地元のスーパーへの出荷やビールイベントへ積極的に参加していく計画です。

今後は工場設備も増設し、ますますの飛躍が期待される

今後は工場設備も増設し、ますますの飛躍が期待される

そして、新たなビールの醸造にも力を入れていく計画もあり、「今月下旬に初めて醸造したIPAを出荷する予定です」と北條氏は新ビールを教えてくださいました。このIPAは昨年取得した発泡酒免許に対応するビール第1弾で、原料に蜂蜜を使用したIPAです。一足早く試飲をさせていただきましたが(まだ、炭酸ガスを入れる前なので、リアルエール状態)、花の蜜を感じさせる香りとしっかりとした苦味で、ペールエールとは異なったキャラクターのビールでした。こちらのビールは樽限定ということで、レストランの他はビアパブで提供されるとのことです。

この他にもいくつか新ビールの構想をお伺いしましたが、これらはまだ公開はNGということで、実際にビールが醸造されるのを楽しみにしたいと思います。

ブルワー、営業といったビール事業部が一丸となって躍進していく山口地ビール。今後の展開に目が離せないブルワリーの1つになりそうです。

 

◆鳴滝高原ブルワリー(山口地ビール株式会社)Data

住所:〒753-0212 山口県山口市大字下小鯖1360-4

電話:083-941-0100

FAX:083-941-0222

E-mail:narutaki@yamaguchi-jibeer.com

Homepage:http://www.yamaguchi-jibeer.com/index.html

Facebook:https://www.facebook.com/yamaguchi.jibeer

Twitter:https://twitter.com/Yamaguchijibeer

【ビール人に会いに行く】愛知県岡崎市「HYAPPA BREWS」Craig Morrey さん&冨成和枝さん

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仕込釜を真剣な眼差しでのぞくのは、HYAPPA BREWS(ひゃっぱぶりゅーす)のヘッドブルワー、クレッグ・モーリー氏。アメリカ・シカゴ出身のクレッグ氏は、醸造所のある愛知県蒲郡市の隣岡崎市で15年前からビアパブ「Izakaya Ja Nai!!」を営んでいる。流暢な日本語でちゃめっけたっぷりにジョークを飛ばす、おおらかで愉快な人柄だ。

一滴一滴、愛100%を注ぐ

クレッグ氏がHYAPPA BREWSを立ち上げたのは2013年のこと。「ビールはソーシャル・ビヴァレッジ。楽しんで味わってもらえるものをつくりたい」という思いでビールを仕込み、自身の店で提供する。醸造所名のHYAPPA BREWSは、同社の理念である「一滴一滴、愛100%」の「100%=ひゃっぱ」が由来だ。

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本人曰く「オヤジの言葉遊び」は、ユーモアあふれるビールの名前にも表れている。本拠地を置く岡崎市は、江戸時代の開祖徳川家康の生誕地。ラベルに名将をあしらった「家康B」は、ビアスタイルのESBにかけて命名された。「『いえやすびー』と『いーえすびー』、似てるでしょ?」。

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この「家康B」には、家康が健康維持のために好んで摂取していたという霊芝をアクセントに用いている。苦虫を噛み潰したような「しかみ像(*1)」は、家康があたかもESBを飲んで「苦い」と言っているようだ。クスっと笑えるストーリー性を秘めたビールを飲めば、自然と会話も弾む。

(*1)三方原の戦いで武田信玄に大敗を喫した家康が、屈辱を忘れまいと絵師に描かせたといわれる肖像画。徳川美術館に収蔵されている。

夢は六次産業化「ビールで地域を元気に」

アメリカではブルワリーが地域づくりの一翼を担うことが少なくないが、HYAPPA BREWSも積極的に地域活動を行っている。「ビールを通して岡崎を元気にしたい」と考えるクレッグ氏は現在、地元岡崎市藤川町で生産される「むらさき麦」を使ったビールづくりに挑戦している。

容器奥側が藤川町のむらさき麦芽。手前の丸みを帯びたものより、細長く青みがかっている。

容器奥側が藤川町のむらさき麦芽。手前の丸みを帯びた通常の麦芽に比べ、細長く青みがかっている。

その一環として2015年からスタートしたのが「麦からつくるクラフトビア」。参加者はむらさき麦の種を蒔き、麦踏み、収穫、ビールの仕込みまで、一連の流れを体験することができる。「自社の畑で麦を栽培しビールづくりを体験してもらうことで、クラフトビールの価値を知ってもらえる」。地域づくりとクラフトビールの価値向上のきっかけとなる、興味深い取り組みだ。

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クレッグ氏を支えるのがHYAPPA BREWSのもう1人のブルワー、冨成和枝さん。「ものづくりを仕事にしたい」とビールづくりの世界に飛び込んだ冨成さんは「自分たちで原料を栽培するところからビールをつくる。六次産業化を実現したい」と意気込む。

もともと酒販店だったスペースを改装してつくられた醸造所には最新鋭の設備はなく、むらさき麦の製麦も手作業で行われる。数時間ごとに手でかきまわし、発芽を促す。うまくいかないこともあるが、こうして手間暇かけてビールをつくることが楽しいのだとクレッグ氏は言う。志を同じくした師弟コンビがこうして一滴一滴に100%愛をこめたビールは、地域に力を与えている。

さかづきBrewing 3/1(火)北千住にオープン

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東京都足立区、最近人気度が高まっている北千住の東口から徒歩3分。商店街から1本脇道に入ったところに3/1(火)待望のブルーパブがオープンします。

自分の理想のビールと場を求めたブルーパブに

店名はさかづきBrewing。店名の由来は「お察しの通り、杯(さかずき)とお酒好きをかけています。杯を酌み交わすなど、酒が取り持つ場というのがありますよね。さかづきBrewingで、和気藹々、気軽に楽しく杯を交わしていただけますようにと願いを込めました」

ロゴについては「月の杯、杯を月に例えるという意味、月のように美しい杯という言葉をモチーフにしました。そして、杯の『ず』を『づ』にしたのは女性らしい月をモチーフにしたかったからです」と熱く語ってくださったのは代表でもあり、醸造担当するのは金山尚子氏。国内大手ビールメーカーで長年、醸造、商品開発を担当してきた経歴をお持ちのブルワーさんです。

曲線を多く用いることで、柔らかな雰囲気をだしている

曲線を多く用いることで、柔らかな雰囲気をだしている

大学院で微生物学を専攻。元々、ビールが好きであり、ビール会社で酵母の研究を志望し、大手メーカーに就職されました。しかし、配属されたのは工場の醸造セクション。そこで醸造に携わるようになりました。「醸造を担当しているうちに自分が想うビールを造りたい」と考えるようになり独立することにしたそうです。

「開業の場所を決めるにあたり、数ヶ月かけて東京中の街を歩き回りました。その中で、とりわけ活気があって、住む人々のエネルギーを肌で感じたのが北千住でした。魅力的でした。歴史あるたくさんの商店街が駅を中心として枝葉のように伸びています。古い下町の情緒を残しつつ、しっかりとした基盤を持つ住宅街には、若いファミリーや学生の方も多く住まわれていて、新しいモノも積極的に受容してくれる雰囲気がありました。さらに、元々、沿線には、かつての勤め先があり、北千住で飲む機会が多く、馴染みの場所だったんです」と北千住に店舗を構えた理由を教えてくださいました。

金山氏の豊富な経験から造り出されるビールには楽しみがつきない

金山氏の豊富な経験から造り出されるビールには楽しみがつきない

しかも、店舗の場所は駅から徒歩3分と好立地です。しかし、北千住は地元では好立地の空き物件がなかなか出ない場所として有名なところで、実際に「この場所が見つかるまでかなりの時間がかかりました」と店舗が決まるまでは苦労もあったそうです。

お店は『1人でもフラッと立ち寄って、ビールを楽しめる空間を目指しました』。店内にはカウンター席もあり、気軽に立ち寄って、出来たてビールを楽しむことができます。

気になるビールは4種類。アメリカン・ペールエール、ドライスタウト、イングリッシュ・ブラウンエール、そしてヴァイツェンの4種類です。「今後はさらに種類を増やしていく予定です。最大10タップを目指します」とバリエーションも増えていく計画です。

今後はさまざなビール造りにチャレンジしていく予定。どんなビールが飲めるのか常にチェックしておこう

工場も自らが設計し、1つ1つ組み立てを行っている。ブルワーは醸造だけではなく、こうした機器の管理も行える技術が必要なのだ

オリジナルビール他にあのビールを最高の状態で

オリジナルビールの他に大手国産メーカーのビールを飲むことができることも特徴の1つです。大手メーカーで醸造を担当してきた金山氏。製造の裏側、造り手の努力を知っている、そして、ブルワーとしての経験を培ってきたバックボーンとなるビールにはたくさんの思いと考えがあって提供することに決めました。

「クラフトビール、国内大手ビールと区別せず、ビールが取りうる自由な表現の一つとしてそれぞれの魅力を楽しんでほしい」

造り手だからこそ惹き出せる大手のビールを飲んでほしいと思います。

料理はドイツ料理で経験豊富なシェフが担当

さかづきBrewingのもう一つの目玉は料理。ドイツ料理店で腕を振るってきたシェフがビールに合うメニューを考案。気になる料理のラインナップはドイツ系になるのか訊いてみると「いえ、そんなことはなく、ビールに合う料理を提供していきます」と答えてくださいました。

その内容はDLG(ドイツ農業協会)で金賞を受賞したこともあるマイスターの造るソーセージ・ハム、3日かけて仕込むスペアリブ、隠し味が決め手のジャーマンポテト。そして、パスタ・ピザ・ピラフとバラエティに富んだメニューです。

【追記】

1人でも気軽に飲みに来れる場所がコンセプトということで、お一人様限定ほろ酔いセットメニューの販売が決定されます!

スペアリブをはじめ、ビールに合うメニューを豊富が揃っている

スペアリブをはじめ、ビールに合うメニューを豊富が揃っている

既に今年に入りFacebookページを立ち上げ、着々と周囲に知られていく存在になっていたためか、皆さんから期待のメッセージにプレッシャーを感じるといいながらも、その表情からは期待感が溢れ出ていらっしゃいました。

日光へ続く、日光街道最初の宿場町、千住に誕生するさかづきBrewing。オープンが楽しみです!

 

◆さかづきBrewing Data

住所:東京都足立区千住旭町11-10

電話:03-5284-9432

FAX:03-5284-9439

E-mail:shoko178_ilbeer@yahoo.co.jp

Facebook:https://www.facebook.com/sakaduki

営業時間:平日…16:00~22:30(L.O. 22:00)

土 …13:00~22:30(L.O. 22:00)

日 …13:00~21:30(L.O. 21:00)*祝前日の場合は、22:30まで

定休日:月曜日・火曜日

創業時の味を守り続けて17年【ファクトリーカミカゼ(西国立)】

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ビアLoverの皆さん、おいしいビールを飲んでいますか?……もちろん飲んでますよね(笑)。では、「おいしいビール」ってどんなビールですか!? もし明確な答えがひとつあるとすれば、それは「出来立てのビール」ではないでしょうか?
大手ビール会社でも、工場併設のレストランで味わう出来立てのビールは、最高においしいですよね。クラフトビールの場合も同様で、ブルーパブやブルワリー併設のレストランなどで飲む、“工場直送”のビールの味は格別です。そんな素敵な時間を味わうために、立川市にある1999年創業の老舗ブルーパブ「ファクトリーカミカゼ」を訪ねました。

西国立駅から徒歩1分の駅近ブルーパブ

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「西国立」駅の踏切に立つと、建物が見える。

JR南武線を終点「立川」駅の1つ手前「西国立」駅で降り、改札を出て右へ。そして踏切へと向かうと、線路の反対側に「KAMIKAZE Beer」と書かれた大きな看板が目に飛び込んできます。この看板のある建物が、今回の目的地「ファクトリーカミカゼ」です。
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ファクトリーカミカゼの入り口。

「ファクトリーカミカゼ」の入り口は、西国立駅からは建物を壁沿いに進んだ一番奥で、懐石料理店「無門庵」の入り口の向かいにあります。駅からわずか徒歩1分。「立川」駅からも徒歩12分の好立地です。木製の扉を開けて中に入ると2階につながる階段が。ブルーパブは2階にあるので、迷わず階上に昇ります。階段を昇りきるとそこには、壁際にジュークボックスが置かれた気取らない飲食スペースが。窓の外には、1階のビール工場が見えます。

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2階のブルーパブ。左端にジュークボックス、窓の外にはビール工場が見える。

居酒屋風に、気軽にグビグビ

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写真はクリームエール中ジョッキ、豆腐サラダ、塩焼き盛り合わせ(とりもも、なんこつ、手羽先、ぼんじり、トマトベーコン)。塩焼きは、削った岩塩を好みでかけて食べます。

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天井から下がる「カミカゼビール」のキャラクター。

 

 

 

 

 

 

 

こちらで飲めるビールの種類は、1階で造っている

  • クリームエール
  • アンバーエール

の2種類と、これらをブレンドした

  • ハーフ&ハーフ

の全3種類。それぞれ小ジョッキ450円、中ジョッキ650円とリーズナブルです。フードは、自家製ピザや麺類といったがっつりめの食事メニューから、ソーセージや揚げ物、サラダ、枝豆といったおつまみまで、ビールとよく合うものが勢ぞろい。全体的に居酒屋っぽいテイストです。
さあ、何はさておきビールです! ということで、まずはクリームエールを。美しいゴールド色で、モルトのアロマが優しくまろやかなフレーバーを感じますが、飲み口はすっきりしていて、とてもキレが良いです。どんな料理とも合うオールマイティさで言えば、一般的なピルスナー以上と言えるかもしれません。そんな“グビグビ系”ビールです。一方のアンバーエールは、ローストモルトのアロマが香ばしくコクがありますが、重すぎず苦すぎず、後味はすっきりしています。ソーセージや塩焼きといった肉料理と合わせると、これもまたついついジョッキが進んでしまう濃色ビールです。
この飲みやすいビールはどのように造られているのでしょうか? 現在、醸造作業を行いながら2階で調理も担当する副醸造長の高橋薫さんに話を伺いました。

創業時のレシピを守って

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写真右が副醸造長の高橋薫さん、左が営業の小林透さん、中央はアルバイトの内田真子さん

 うちの母体は向かいの懐石料理店なので、「料理の邪魔をしないビールを造る」という考えが基本にあります。そこから誕生したのが、このクリームエールとアンバーエールです。

***

と高橋さん。「ファクトリーカミカゼ」は1999年、地元・立川で古くから愛される懐石料理店「無門庵」の自家製ビール工場として創業。常陸野ネストビールの立ち上げ時にも招聘された米国人醸造士マーク・ハモン氏の指導のもと、レシピが開発されました。高橋さんの入社はその1年後だったため、ハモン氏の直接指導こそ受けていませんが、先輩醸造スタッフから引き継いだ氏直伝のレシピを守り続けて今に到ります。

立ち上げ時のスタッフは、ここで実際に弊社の工場の器具を使いながらハモン氏にトレーニングしてもらったようですね。いつもの原料が入手できないときは風味の近いものに替えたりすることもありますが、基本は創業時のレシピのままです。

***

 副原料は一切使用しないモルト100%ビール。クリームエールのベースモルトは、ドイツのワイヤーマン社製です。アンバーエールは、イギリスのペールエールモルトなどを含む5、6種類のモルトを組み合わせています。ホップはカスケードやトラディションがメイン。

うちは作業場が狭いわりにタンクが大きく、小さいタンクでも2000リットル、大きいほうは4000リットルあるんです。発酵タンクが3本、貯酒タンク3本……といった感じなので、タンクのやりくりの面でも労力の面でも、現状の2種類を回していくので精一杯。なので、フルーツを入れたビールなんかも造れたらいいなあ……みたいな思いは常にあるものの、なかなか新作を造るのは難しくて。「もっと小さいタンクだったら、いろいろできたのにねー」なんて言われることもありますね(笑)。

***

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2月の季節限定ビアカクテルの「チョコビアカクテル」。

新たなテイストのビールを……という高橋さんの願いは、季節限定の「ビアカクテル」として折にふれて具現化されています。2月はバレンタインシーズンということで、取材時にはアンバーエールを使った「チョコビアカクテル」と「モカビアカクテル」がメニューにありました。チョコの方は私もいただきましたが、とってもおいしい! 実は高橋さん、ビールがあまり得意ではなく、試飲以外ではほとんど飲まないとのこと。あくまで「造ること」が好きなのだそうです。そんな彼女だからこそ、「ビールは苦くて飲めない」という人にも飲みやすいメニューを考えられるのでしょう。

同じ材料を使って同じように造るのに同じにならない。もちろん品質的には許容範囲内の誤差ですが、前回と100%同じビールは絶対にできない。それが面白くて20年近くこの仕事をやっているんです。

***

以前は、近隣の別の建物に直営のビアレストランがあったそうで、その頃高橋さんは造ったビールを卸すまでが仕事でした。その後、現在のブルーパブが工場の2階にオープン。「お客様に、ビールを造っている人の顔が見えた方が良い」という会社の方針で、高橋さんはパブでも働くことになりました。おおよその1日の流れは、朝出社して午後3時ぐらいまで1階の工場で作業。その後2階に上がり、4時から準備をし、5時に開店という、なかなかハードなスケジュールです。いったい何時間労働に?と思わず尋ねると、「それは聞かないで…」と笑う高橋さんですが、

お客様の声をダイレクトに聞けるのが良いですね。帰りがけに「ビールおいしかったよ」なんて声を掛けていただいたときは、内心「よし」と思って。やりがいにつながるので、それは幸せなことだなと思います。まあ、ときどき落ち込むこともありますけど。

***

樽生ビールが飲めるのは、ほぼこの2階のブルーパブのみです。瓶ビールは、向かいに店舗を構える懐石料理店「無門庵」、立川・国立エリアの商業施設内のカフェ3店舗で飲むことができます。酒販店での販売はなく、伊勢丹立川店の和洋酒売り場のみで購入が可能です。
創業の味を17年守り続ける「ファクトリーカミカゼ」の樽生を飲みに行きませんか?
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立川・国立エリアのカフェで飲めるボトルビール。ラベルは「西国立ビール」となっているが、中身はここの1階で造っているクリームエールとアンバーエールだ。

photo by Masashi Hikita☆☆☆☆

ファクトリーカミカゼ
東京都立川市錦町1-24-26
Tel: 042-524-6556
月~土曜 17:00~23:00
土日 はカフェ営業あり
11:00~15:30(ラストオーダー15:00)
カミカゼバーガー&ナポリタン、コーヒーやケーキ等。
もちろんカミカゼビールも飲めます。
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